運命みたいな恋は、ほら!すぐそこに転がっている

深夜だからだろうか、目の前は真っ暗で何も見えない。
でもおかしいな、何かがいつもと違う。
しばらくベッドに寝ころんだまま頭の中で考え事をしていると、遠くの方から消防車のサイレンが聞こえてきた。
その音に驚き飛び起きた私は、次の瞬間息苦しさに襲われた。

「嘘。・・・火事?」

咄嗟にベッドから這い出し床を這うように部屋の入り口に向かうと、喉が痛むのを感じた。
この時になって夜だから暗いのではなく、充満した煙によって視界が遮られていることに気づいた。
逃げなくてはいけないとの一心で玄関ドアを開け、廊下に出ると外へと向かう人が押し合っている。
私はパジャマ代わりに着ていたスエットの袖で口元抑えながら、外へと向かう人の波に乗った。
息苦しくて、臭くて、何よりも恐怖心でパニック状態だった。
ただひたすらに、私は前へと進んだ。

「大丈夫ですか?」

何とかアパートの外へ出たところで救急隊員らしき人に声をかけられ、ああ助かったのだと全身の力が抜けていくのを感じた。
ただし、記憶があるのはここまで。
何とも言えない安堵感からか、私はその場で意識を失った。