運命みたいな恋は、ほら!すぐそこに転がっている

こうして自分の意に反して体を触れられると、私は動けなくなる。
これは10代の頃に受けたストーカーのトラウマで、過去の記憶がフラッシュバックするのだ。
今までのバイト中にも何度か同じようなことがあり、その度に一緒に働いていた容子に助けてもらった。
しかし、今容子はいない。
困ったなこのままでは店に迷惑をかけてしまうかもしれないと考え始めた時、
「ちょっと、こっちに来て」
聞き覚えのある声がして背中を押され、私は歩き出すことになった。

腕を引いていた旅行客も何が起きたのかわからない様子で目を丸くしている中、私は店の奥にあるスペースへと連れて行かれた。
最初は何が起きているのかわからなかった。
背中を押されたために顔を見ることはできなかったが声には聞き覚えがあり、今日の昼間大学病院で会った小児科の先生だとすぐにわかった。
そして、店の奥の裏口へと続く通路まで来たところで、絡まれていた私を助けてくれたんだと気が付いた。