運命みたいな恋は、ほら！すぐそこに転がっている

「梨々香」

真っすぐに走ってきて、徹は私の手を握った。

「ごめんなさい、心配かけて」
「バカ、そんなこと気にするな。それで、大丈夫なのか？」
「うん、薬を飲んで楽になったわ」

真冬なのに汗をかきながら飛び込んできた徹の方がよっぽど真っ赤な顔をしている。
私が倒れたと沙月さんから聞いて、大急ぎで帰って来てくれたようだ。

「こんなことなら、俺が一緒にいればよかったな」
「何言っているの、徹だって仕事があるでしょ？」
「それでも、倒れられるくらいなら休んでついていた方がいい」
「そんな・・・」

しょんぼりと肩を落とす徹に返す言葉も見つからず、私は徹の手を握り直した。

「じゃあ、私は帰るわね」
「ああ、ありがとう」
「すみません、ありがとうございました」

起き上ることもできず横になったままお礼を言うと、沙月さんは帰って行った。