運命みたいな恋は、ほら!すぐそこに転がっている

「ここでいいですか?」

さすがに居室で二人きりになるのは嫌で、初めて利用した個室ラウンジ。
コンシェルジュが飲み物を用意してくれるが、その後は2人だけの空間で誰に干渉されることもなく話ができる。

「昨日、あなたもいたのよね」
「ええ」

前置きもなく切り出され、私素直にうなずいた。

「あなたは自分が何をしたのかわかっているの?徹さんの未来を、奪ったのよ」

それは違いますと言いたかったけれど、今何を言っても彼女には届かない。そう思ったから、私は何も言い返さなかった。

「恥を知りなさい」

パシャッ。
叫ぶような声とともに、彼女がグラスの水を投げかけた。
きっと黙り込んでしまった私に腹が立ったのだろう。
頭も体も冷たくなっていく中、私は真っすぐに彼女を見返した。

「これで気が済みましたか?」

ここのところ嫌がらせのメールやメッセージが続いて、それが彼女の仕業なのもわかっていた。
もちろんエスカレートするようなら徹に相談するつもりだったが、黙っていればその内に治まるのではないかと静観していた。
しかし、もう我慢する必要はない。

「あなたみたいな人が、徹さんと釣り合うわけないじゃない」
「それでも、私は徹が好きなんです」

なぜか、私の中に迷いはなかった。
何を言われても諦めない。その思いだけで私は彼女対峙した。