運命みたいな恋は、ほら!すぐそこに転がっている

「大丈夫なの?」

二人で向き合っていかにもな家庭料理と囲みながら、私は恐る恐る声に出してみた。
さすがに医者としてきちんと自立している徹が路頭に迷うとは思えないけれど、何か良くないことがあるのでは心配で黙っていられなかった。

「褒められたやり方ではないが、他に方法がなかった。ああでもしなければ、向こうも諦めないだろう。でも、この部屋は出て行くことになるかもしれないな」
「そう」

たしか、この部屋は頼まれて住んでいただけだと言っていた気がする。

「今度の休みにでも、不動産屋に行ってみるか?」
「え?」

一瞬何を言われたかわからず顔を上げた。
これって、一緒に不動産屋に行こうって言われているんだろうか?
それはその・・・

「俺はこれからもずっと梨々香と一緒にいたい」
まるで宣言するような言葉。
「私で・・・いいの?」

やはり私では徹に釣り合わないような気がして躊躇う気持ちが出た。
見た目がよくて医者の徹ならもっと条件のいい相手はたくさんいるはずだ。

「俺は、梨々香がいいんだ。梨々香は?」
「私は・・・徹が好き」

じゃあ問題ないなと、徹がニコリと笑う。
私もじわじわと嬉しさが込み上げていて、小さく微笑みを返した。
好きな人に好きだと言ってもらってうれしくないはずはない。
ましてや今日は偶然にも徹の覚悟を見てしまった。
ここまで来たらもう逃げだすことはできない。

「2人で幸せになろうな」
「はい」

ひょっとしたらこれがプロポーズなのかもしれない。
そう思ったらうれしくて、私は必死に涙をこらえた。