運命みたいな恋は、ほら!すぐそこに転がっている

2人が入場し始まった婚約パーティー。
動けないでいる私の耳にも賑やかな音楽が聞こえてくるし、ドアが開く度に歓声まで聞こえてきて、心臓が締め付けられるようで痛い。
それでも私は動けないままでいた。
それから1時間以上経っただろうか、でも実際はそんなに長い時間ではなかったのかもしれないが、いきなり激しくドアが開きホテルのスタッフが出てきた。
何があったのだろうと見ていると、中から声が聞こえてきた。

「本日はお忙しい中ありがとうございます。ですが、この婚約はお受けできません。申し訳ありません」

一息に言う声は、間違いなく徹のものだ。
スタッフが出入りのために開けた扉から中の様子が伺え、徹が頭を下げている姿が目に飛び込んできた。
私は反射的にその場に立ちあがった。
その後何が起きたのか、正直私の中での記憶がはっきりしない。
会場内は静まり返り、まるで時間が止まったようだった。
そのうち泣き声が聞こえてきて、女性がその場に崩れ落ちていた。
しばらくして徹は頭を上げると、口を開く事はなく会場の外へ向かって歩き出した。