運命みたいな恋は、ほら!すぐそこに転がっている

日曜日のせいもあり、着飾った人で賑わうホテル内にはドレスや着物の人もいて華やかな雰囲気だ。

「私ももう少しおしゃれすればよかったわ」
ボソリとつぶやいてから、思わず笑った。

今日、私は徹のフィアンセを名乗る女性に呼び出された。
決して来たいわけではなかったけれど、話があると言われ断れなかった。

・・・午後1時。
時間になっても現れる様子はないが、周囲には人も増えてきて人間観察しているだけで飽きる事はない。
そうやって野次馬気分で周りを見ていると、私はある人を見つけた。

「徹」
息を吐くように声にした。

間違いない、タキシードを着た徹がそこにいる。
嘘、どうして?
ドキドキと高鳴る鼓動。
まず驚いて、見とれて、そしてガタガタと体が震えだした。
朝私が見た優しい笑顔の徹より凛々しくて、精悍でモデルのような美しい姿が立っていた。
体に力が入らないまま固まっていると、「徹さん」少し甘いく呼ぶ声。
それは、綺麗なオレンジ色のドレスを着た女性で、間違いない徹のフィアンセと名乗った人だ。
そうか、そういうことか、このタイミングで私はすべて腑に落ちた。
彼女は、この場面を私に見せたくて、呼んだんだ。
そう思ったら、怒りよりも悲しさが湧き上がってきた。
すぐにでもここから逃げ出したかったが、放心状態の私は動くことができなかった。