運命みたいな恋は、ほら!すぐそこに転がっている

私は佐山徹という人をよく知っている。
常に冷静であまり感情を表に出す方ではなく、患者である子供達にも常に穏やかな笑顔で接する優しい小児科医だが、自分が納得しないことに対しては頑固な一面もある。
だからこそ転がり込むように居候をしている私は、彼の私生活に立ち入りすぎることがないようにと意識しながら生活をしていた。
しかし、そんな私たちの関係は10日ほど前に壊れてしまった。
保育園の忘年会で晴斗君のお父さんに送るからと言って連れ去られそうになった私を徹が助け、その夜私たちは一線を越えたのだ。
徹にとってはショックを受けた私を慰めるための行動だったのだと思うけれど、私は本心から徹と共にいたいと願った。
だからこうなってしまったことを後悔をするつもりはないが、私が居候であることにも近いうちにこのマンションを出て行くことにも変わりはない。
結局、私たちの関係に未来はないのだ。