頼みもしないのに、私は子供の頃から目立つ存在だった。
亡くなった母さんはすれ違った人が振り返るほどの美人だったらしいから、私の外見も母の血をいくらか引いているのだろう。
注目され、ちやほやされ、陰では悪口を言われる。私はそんな環境で育った。
当然のようにいわれのない誹謗中傷も日常茶飯事で、そのせいで大人しい性格になってしまったのかもしれない。
「いらっしゃいませ」
店の扉が開き、マスターが声を上げたのを聞いて私も入口に目をやる。
午後7時。
込み合い始める時間だけに、次々とお客さんがやって来る。
ちょうど入って来たのは予約客らしいスーツを着た5人組だった。
あっ。
スーツの集団の中の1人を見た瞬間、私の動きが止まった。
あの人は確か・・・昼間の大学病院で晴斗くんを診察してくれた先生だ。
でも、大きな病院で働く医師ならば、一日にたくさんの患者を診察することだろう。
きっと私の顔なんて覚えているはずはない。
そう自分に言い聞かせて、私はいつも通り仕事をこなしていった。
亡くなった母さんはすれ違った人が振り返るほどの美人だったらしいから、私の外見も母の血をいくらか引いているのだろう。
注目され、ちやほやされ、陰では悪口を言われる。私はそんな環境で育った。
当然のようにいわれのない誹謗中傷も日常茶飯事で、そのせいで大人しい性格になってしまったのかもしれない。
「いらっしゃいませ」
店の扉が開き、マスターが声を上げたのを聞いて私も入口に目をやる。
午後7時。
込み合い始める時間だけに、次々とお客さんがやって来る。
ちょうど入って来たのは予約客らしいスーツを着た5人組だった。
あっ。
スーツの集団の中の1人を見た瞬間、私の動きが止まった。
あの人は確か・・・昼間の大学病院で晴斗くんを診察してくれた先生だ。
でも、大きな病院で働く医師ならば、一日にたくさんの患者を診察することだろう。
きっと私の顔なんて覚えているはずはない。
そう自分に言い聞かせて、私はいつも通り仕事をこなしていった。



