運命みたいな恋は、ほら!すぐそこに転がっている

「梨々香?」

自宅マンションの俺の寝室にあるベッドの上で横になったままかれこれ一時間以上動かない梨々香の名前を、俺は呼んでみた。

「ん、ぅん-ん」

俺の声に反応したのか、少しだけ眉間にしわを寄せ寝返りをうつ梨々香。
ベッドに並んだ俺は上半身だけ起こした状態で、その様子を見つめていた。
相変わらず眼は閉じたまま静かな寝息をたてながらも、時々百面相のように表情を変える梨々香から俺は目が離せない。
すると、不意に梨々香の目から涙があふれた。

「かわいそうに」

もしかしたら怖い夢でも見ているのだろうか、目尻から流れ出た涙が頬へと流れ落ちる。
俺は梨々香の頬に手を当てて、そっと涙の跡をなぞった。