運命みたいな恋は、ほら!すぐそこに転がっている

「失礼します」

診察室に入ると白衣を着た男性がデスクに置かれたパソコンに向かっていた。
どうやら私に気づいた様子はなく淡々とキーボードを叩いているのだが、私のほうは驚きでその場に立ち尽くした。

「説明しますので、どうぞお座りくだ」

言いながら振り返り私を見ると、途中で言葉が止まった。

「どうして徹さんが?」

まさかここで再会するとは思っていなかった私は、無意識のうちに言葉にした。

「今日は救急外来の当番なんだ」
「そうだったのね」

そういえば救急外来は24時間体制だから、常駐のスタッフだけでは人手が足りなくて、病院の医師は月に何度か交代で勤務に入るのだと徹さんが言っていた。
でもまさか今日がその日だったとは・・・

「梨々香こそどうしたんだ?」
「実は弟が寮の部屋で倒れたって聞いて駆けつけたの」
「じゃあ、患者の高校生っていうのは」
「ええ、私の弟です」

どうやら徹さんは本当に竜星の素性を知らなかったらしい。