運命みたいな恋は、ほら!すぐそこに転がっている

「祖父母は本当にいい人だ。ただそこに、家とか事業とかってものが絡んでくると、話は単純にはいかない」
「どういうこと?」

ごくごく平凡な家に育った私にはよく理解できない。

「母の実家は江戸時代から続く由緒ある家だ。多くの不動産も所有しているし、3代前に起こした会社は今や日本有数の企業となった。管理する資産や事業の規模が大きくなれば、色んなしがらみも生まれる。そういう中で母は家を出るしかなかったし、祖父母は父を受け入れることができなかったんだ」

よくわからないけれど、大きな家を継ぐってことはそれだけ苦労のあることなのだろう。
やっぱり一介の保育士でしかない私には縁のない世界だわと考えてから、頭に浮かんだ疑問。

「徹さんは丸川商事を継ぐつもりなの?」

少なくともおじいさまとおばあさまはそれを望んでいらっしゃる気がする。

「それはないな。俺は、医者をやめるつもりもない」
「そうなのね」

良かった。やっぱり徹さんは白衣を着た姿が一番しっくりくる。

「ただ、色々と心配事があってね・・・」

最後は寂しそうに、徹さんはコーヒーカップに視線を落とした。