運命みたいな恋は、ほら!すぐそこに転がっている

「梨々香は、会ったんだろう。だから怒っているんだろ?」

顔色伺うように徹さんは視線を向けて来るが、私は意味が分からず首を傾げてしまう。

「それは…」

誰のことを言っているのと聞こうとして、思い浮かんだのはフィアンセと名乗った彼女、高島椿さんの顔。
そして、やっぱり本当のフィアンセだったんだとやるせない思いが込み上げた。
それにしても、徹さんらしくないなあ。
私はただの同居人だから打ち明ける必要もなかったのかもしれないけれど、相手の女性に対しても失礼な態度だ。
この時、私は初めて徹さんを睨みつけた。

「ごめん、悪かった。だからそんなに怒らないでくれ」
「怒るなって、本気で言ってますか?」

もしそうなら、私は徹さんを軽蔑する。

「近いうちに話すつもりだったんだ。本当にすまなかった」

私の剣幕に負けてか、徹さんは神妙な顔で頭を下げてくれた。