運命みたいな恋は、ほら!すぐそこに転がっている

「病院は患者の命を預かる場所ですので、こういうやり方には賛成しませんが、聞かなかったこちらにも落ち度はあります。申し訳ありません」

先生の方も立ち上がって頭を下げてくださった。

「いいえ、丁寧に診察していただき感謝しています。ありがとうございました」
「どうぞお大事に」

結局先生は私に笑いかけることもなく診察を終えた。
私も少し寂しい気持ちを抱えながらも、これでよかったんだと自分に言い聞かせ診察室を出た。

「先生、帰ろ」
「うん、そうね」

半日も病院にいて疲れてしまった晴斗くんは、早く早くと私の腕を引く。
私も早足で病院を後にした。
それにしても素敵な先生だったな。
穏やかで、誠実そうで、真面目そうな男性。
できることならもっと違う状況で出会いたかった。