運命みたいな恋は、ほら!すぐそこに転がっている

「不躾に声をかけてごめんなさい。私、三朝沙月といいます。以前はこの店で働いていたものだから褒められると嬉しくって」
「そう、ですか」

聞きたいことはあるのにどう聞き出していいかわからず、私は言葉が続かない。
困っている様子が私の顔に出たのか、女性客は再び口を開いた。

「私、旧姓は佐山って言うんだけれど・・・」
「えっ」

あまりにもびっくりして、持っていたフォークが手から滑り落ちた。
佐山・・・沙月さん。
それはつまり、

「佐山徹の姉です」

きちんと私の方に向き直って、女性客、いやお姉さんは挨拶をしてくださった。

「私、三上梨々香です」

いまさらと思いながら、私も頭を下げる。

「梨々香さんは徹と、」
「お部屋をお借りしています」

同棲ではありませんとの気持ちが先に出て、お姉さんお言葉を遮った。

「そうなのね」

不思議なことに、お姉さんは徹さんと私の関係についてそれ以上聞いては来なかった。