「お、今日はパンか」
シャワーから戻ってきた徹さんが上機嫌でテーブルを覗き込んでいる。
「たまにはいいかなと思ってパンにしたんだけど、よかったかしら?」
「もちろんいいよ。パンも嫌いじゃない。それにクロックムッシュなんて久しぶりだ」
「そう、それはよかった」
珍しい料理ではないから普段から作る家庭もあるだろうし、どこかの店で食べたのかもしれない。
けれど、忙しい仕事を持つ一人暮らしの男性が自分で作る姿はあまり想像できない。きっとクロックムッシュを作ってくれるような彼女がいたのだろう。そんなことを想像して少しだけ寂しい気持ちになった。
そして、昨日の晩徹さんのスマホ画面に表示された『沙月』という名前が思い浮かんだ。
普段は誰にでも丁寧な言葉で対応する徹さんにしては、随分とくだけた物言に親しい間柄なのだろうなと感じられた。
当然電話の相手が気にならないと言えば嘘になるが、私にはたずねる勇気がなかった。
シャワーから戻ってきた徹さんが上機嫌でテーブルを覗き込んでいる。
「たまにはいいかなと思ってパンにしたんだけど、よかったかしら?」
「もちろんいいよ。パンも嫌いじゃない。それにクロックムッシュなんて久しぶりだ」
「そう、それはよかった」
珍しい料理ではないから普段から作る家庭もあるだろうし、どこかの店で食べたのかもしれない。
けれど、忙しい仕事を持つ一人暮らしの男性が自分で作る姿はあまり想像できない。きっとクロックムッシュを作ってくれるような彼女がいたのだろう。そんなことを想像して少しだけ寂しい気持ちになった。
そして、昨日の晩徹さんのスマホ画面に表示された『沙月』という名前が思い浮かんだ。
普段は誰にでも丁寧な言葉で対応する徹さんにしては、随分とくだけた物言に親しい間柄なのだろうなと感じられた。
当然電話の相手が気にならないと言えば嘘になるが、私にはたずねる勇気がなかった。



