運命みたいな恋は、ほら!すぐそこに転がっている

「ではあなたは、保育園の方ですか?」
「ええ、担当の保育士です」

黙っていてすみませんとの気持ちを込めて、私は頭を下げた。

「なぜ仰って下さらなかったんですか?」
「それは・・・」

晴斗くんは以前からケガが多く、何度も園から病院へ連れて行くことがあった。
その際には必ずと言っていいほど虐待を疑われ、親御さんを呼んでくださいとの話になった。
特に晴斗くんの家はシングルファザーでお父様も忙しいサラリーマン。
何度か呼び出されているうちに「これでは仕事にならないからよほどの事がない限り病院へは連れて行かないで欲しい」と申し入れがあった。
園でお預かりする以上そうはいかないと何度も説明したのだが聞き入れてはもらえず、受診をするときにはできるだけお父さんの負担のならないようにと気を使っている。
そんな事情もあり、患者との関係を聞かれなかったことをいいことに、私が園の人間だということを言わずに受診した。

「黙っていて、申し訳ありません」

普段から保育士が園児の受診に付き添うことがない訳ではない。
それについては間違っていないと思うが、誤解されているのを知ったうえで黙っていたことを謝った。