素直と天然と少しの頑固を加えて

「如何した?」
自分でもよく判らない。
勝手に涙が出てくるんだもん。

「私達、付き合ってるの?」
克君は大きく見開いて、「今さら?」

良かった。別れ話じゃなくって。
周りの人なんか気にせず抱きついた。

頭ポンポンがこんなに嬉しいとは思わなかった。
涙と鼻水が止まらない。
汚いのに、克君はハンカチで拭いてくれた。

その後、あまり時間が無いからと言って、新しい会社に連れて行ってもらった。

甘い匂いが立ちこめている。
レンタルキッチンと少しの事務所スペースがある、克君達のお城にお邪魔した。
「彼女の橘樹紗依さん」
会社の人に彼女って紹介された!

「あれ?『りんりん』じゃないの?」
やっぱりそう思われてたんだ。
「あれはゼミの人で、彼女は紗依だから」
りんりんさんもここに来たんだ。
ちょっと悔しいけど、ちゃんと紹介してくれたから、良しとしよう。