素直と天然と少しの頑固を加えて

事務所に着くと、昨日ほどじゃないけど、そこそこ忙しく対応してた。

「彼女が和田さんで『りんりん』さん」
おじさんたちの方が緊張している。
和田さんは堅苦しいからりんりんで良いって言って、何やらいっぱい写真を撮って、載せても良いか聞いている。
高柳さんの事を『シェフ』と呼んで、イケメンだと騒いでる。
本人もまんざらでは無さそうで楽しそうにやっている。

これからも定期的に新作の試食に参加して、SNSにあげてもらうことにした。
約束のチョコを渡して御礼を言い、今日貰った義理やら友チョコもそんなに食べられないし一緒に渡そうと思った。

「高木君、これ義理とかじゃないと思うよ」
「?」
「誰からどれを貰ったか、写真撮ってメモっといた方が良いと思うよ」
「??」
「ホワイトデーどうするの?」

考えていなかった。
だって義理とか友チョコだと思っていたから。

「女の子は一生懸命、頑張って渡したんだから、断るにしても、誠意を持って断ってあげなきゃ」
どうしよう。
「これからのこの店のイメージもあるよ」
なんて笑って教えてくれた。

「あと、一つだけ手作りので名前が無いのがあるけど、誰からか判る?誰からか判らなければ食べない方が良いと思うけど」
紗依からだ。
「大丈夫、判ってる」

「ちゃんと誤解されないようにね」

りんりんは「やば、約束に遅れる」って、走って帰っていった。