素直と天然と少しの頑固を加えて

夏休み、リハーサルのつもりで来た会社、カンペール・ジャポン。
チョコの製造販売とカフェを展開しているフランスの子会社。
さすがに女子率も高い。
交通費とお弁当、お土産のチョコと少しのバイト代。出ないところもあるらしい。

朝から俺を含めて10人ほど、アンケートの整理を頼まれた。
今日は一日かかりそうな予感。
会議室に弁当とお土産のチョコが届いた。
気が付けばもうお昼になっていた。
女子は焼肉弁当には興味なくチョコの写真を撮っている。
ただ一人を除いては。
嬉しそうな顔をして真面目に『いただきます』なんかをやっている。
思わずじっと見てしまった。
「分かります?」
何を言ってるのかが分からない。
「横の紐を引っ張ったら温かくなるんですよ」
彼女に見取れてたのは弁当の食べ方が分からないと思われたようだ。
「なるほど。ありがとう」
それにしても、美味そうに食べるよなぁ。
「この会社、当たりです。お弁当、こんなに美味しいんですもん」
幸せなヤツ。
俺も弁当を食べ始めた。
最後に嬉しそうに弁当に入っていたゼリーも食べて、『ご馳走さま』って手を合わせてた。

なんか良いな。
「熱っ」
前で思いっ切り笑われてる。
「お弁当、温めるときゼリーを抜かなかったんですか!」

入館許可証の入っているIDカードケースを見た。
名前、橘樹紗依(たちばなさよ)。
リハーサルのつもりの会社だった。
補欠の会社が本命の会社に変わった。