蝉が騒がしい暑苦しい夏。

私は教科書を音を鳴らしながら扇ぎ、少しの涼しい風を堪能していた。


…ふと思う。私は、平凡だと。
いや、それ以下ではないのだろうかと、思ってしまう。



高校2年になり、色々世間のこととか、分かるようになってきた。

だけど、分かれば分かるほど、人間関係がめんどくさかったり、なんでか、自分が惨めに思えてきたり。



扇ぐ手を辞め、何回吐いたか分からないため息をつく。

「彩乃、悪いけど掃除代わってくんね?予定入ってさ」

白川彩乃。私の名前だ。
平凡だと思うと、全てが全部つまらないものに思える。名前も、人生も、成績も。

私は頼み事に断れず頷くと、思わずガッツポーズをしそうな勢いで、ありがとうな、と言ってきた。




後々、その男子の声が聞こえた。

…カラオケに行くらしい。掃除が嫌ならなんで掃除当番に入ったんだろう。


何となくむしゃくしゃしながら、窓の方に目をやる。


青空に、積乱雲が広がっていた。