柊哉side
「それ、何作ってるの?」
「四葉のクローバー。同じ部屋のお友達が手術するから、お守りに渡すの!」
完成している物を見本にしながら、友達の為に小さな手で一生懸命に折っているその姿に...目が離せなくなった。やがて完成したようで四葉のクローバーを持った彼女が顔を上げニコッと笑う。
「これ、お兄ちゃんにあげる」
「え?でも友達に渡すお守りでしょ?」
「...お兄ちゃん、寂しそうだから。これを持ってるとね、病気も治って幸せになれるんだよ。お姉さんが教えてくれたの。だからお兄ちゃんにもあげる」
俺が、寂しそう...?そっか、そうなんだ...
今まで考えた事もなかった自分の奥底に眠る感情を、彼女に教えてもらった気がした。差し出されたそれを受け取ると、じわじわと胸の奥から暖かいものが溢れ出る感覚がする。
...なんだろう、これは。今まで経験した事がない感覚に戸惑っていると、彼女は申し訳なさそうにこっちを見ていた。
「いらなかった...?」
「ううん、ありがとう。大切にするよ」
彼女の問いかけにハッとし慌ててお礼を伝えると、ぱぁと笑顔になり「よかった!」と安心した表情を見せた。
「ねぇ、病室から一人で抜け出してきたの?お母さんとかは?」
今は確か面会時間のはずだ。すると俺の問いかけに先ほどの笑顔から一転、また儚げな彼女に戻ってしまう。
「お母さん、いないよ。ずっと前に死んじゃったから。お父さんもお仕事で遠い国にいるんだって」
思いもよらない彼女の言葉に、息が詰まる。そっか、この子も俺と同じなんだ...
「俺も。お母さんいないんだ。少し前に死んじゃったから。同じだね」そう言うと、彼女は大きな瞳をまん丸にして俺を見ていた。
「本当に?お兄ちゃんも、同じ...?」
「本当だよ」
その瞬間、このまま彼女とどこか遠くへ消えてしまいたくなった。気がつくと俺は彼女の小さな手をぎゅっと握っていて、ほとんど無意識に言葉が溢れていた。
「一緒に、お空にいるお母さんの所に行かない?」
自分でもなぜこんな事を言ったのか分からない。彼女にこの言葉の意味がどれほど伝わっていたのかも、分からない。
ただ目の前の彼女はゆっくりと微笑んだかと思うとポロポロと涙を流し始め、その光景がじわじわと滲んできて顔がよく見えなくなる。
すると突然咳き込み始め、俺は慌てて自分の涙を拭って背中をさする。しかしどんどん呼吸が苦しそうになっていく彼女に「大丈夫?」と声をかけることしか出来ず、このままだとまずいよな...と焦り始めた時、こちらに走ってくる白衣姿の人が見えた。その人は慌てて彼女を抱き上げ「ありがとうな」と俺に微笑むとすぐに走っていってしまった。
その場に取り残された俺は、しばし放心状態だった。あんなに苦しそうにしていたのに、背中をさする事しかできなかった...。明るい笑顔を見せてくれた彼女に、あんな事を言って俺が泣かせてしまったせいで...。今まで感じた事がないほど温かい気持ちをくれた彼女に、俺は何もしてあげられなかったんだ...。
心に、罪悪感にも似た何とも言えない気持ちが残った。
「それ、何作ってるの?」
「四葉のクローバー。同じ部屋のお友達が手術するから、お守りに渡すの!」
完成している物を見本にしながら、友達の為に小さな手で一生懸命に折っているその姿に...目が離せなくなった。やがて完成したようで四葉のクローバーを持った彼女が顔を上げニコッと笑う。
「これ、お兄ちゃんにあげる」
「え?でも友達に渡すお守りでしょ?」
「...お兄ちゃん、寂しそうだから。これを持ってるとね、病気も治って幸せになれるんだよ。お姉さんが教えてくれたの。だからお兄ちゃんにもあげる」
俺が、寂しそう...?そっか、そうなんだ...
今まで考えた事もなかった自分の奥底に眠る感情を、彼女に教えてもらった気がした。差し出されたそれを受け取ると、じわじわと胸の奥から暖かいものが溢れ出る感覚がする。
...なんだろう、これは。今まで経験した事がない感覚に戸惑っていると、彼女は申し訳なさそうにこっちを見ていた。
「いらなかった...?」
「ううん、ありがとう。大切にするよ」
彼女の問いかけにハッとし慌ててお礼を伝えると、ぱぁと笑顔になり「よかった!」と安心した表情を見せた。
「ねぇ、病室から一人で抜け出してきたの?お母さんとかは?」
今は確か面会時間のはずだ。すると俺の問いかけに先ほどの笑顔から一転、また儚げな彼女に戻ってしまう。
「お母さん、いないよ。ずっと前に死んじゃったから。お父さんもお仕事で遠い国にいるんだって」
思いもよらない彼女の言葉に、息が詰まる。そっか、この子も俺と同じなんだ...
「俺も。お母さんいないんだ。少し前に死んじゃったから。同じだね」そう言うと、彼女は大きな瞳をまん丸にして俺を見ていた。
「本当に?お兄ちゃんも、同じ...?」
「本当だよ」
その瞬間、このまま彼女とどこか遠くへ消えてしまいたくなった。気がつくと俺は彼女の小さな手をぎゅっと握っていて、ほとんど無意識に言葉が溢れていた。
「一緒に、お空にいるお母さんの所に行かない?」
自分でもなぜこんな事を言ったのか分からない。彼女にこの言葉の意味がどれほど伝わっていたのかも、分からない。
ただ目の前の彼女はゆっくりと微笑んだかと思うとポロポロと涙を流し始め、その光景がじわじわと滲んできて顔がよく見えなくなる。
すると突然咳き込み始め、俺は慌てて自分の涙を拭って背中をさする。しかしどんどん呼吸が苦しそうになっていく彼女に「大丈夫?」と声をかけることしか出来ず、このままだとまずいよな...と焦り始めた時、こちらに走ってくる白衣姿の人が見えた。その人は慌てて彼女を抱き上げ「ありがとうな」と俺に微笑むとすぐに走っていってしまった。
その場に取り残された俺は、しばし放心状態だった。あんなに苦しそうにしていたのに、背中をさする事しかできなかった...。明るい笑顔を見せてくれた彼女に、あんな事を言って俺が泣かせてしまったせいで...。今まで感じた事がないほど温かい気持ちをくれた彼女に、俺は何もしてあげられなかったんだ...。
心に、罪悪感にも似た何とも言えない気持ちが残った。
