エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜

柊哉side
 良かった...。指輪は優茉の指にピッタリだった。女性に指輪を贈った経験などなくサイズも全く分からなかったので、実は眠っている間に測った事は出来れば黙っておきたい。
 何度も角度を変えながら嬉しそうに指輪を見つめる彼女。俺を想って選んでくれたプレゼントも、なぜか恥ずかしそうに饒舌になる優茉も、プロポーズに綺麗な涙を流して頷いてくれた姿も...愛おしくて堪らない。身体の奥から込み上げてくるものを、とうとう我慢出来なくなりそうで口から言葉が溢れかけた時、紙袋が音を立てて落ちた。
 ...まるで冷静になれと言われている様なタイミング。確かにまだ優茉のケーキも食べていないし、今じゃないよな...。

 「柊哉さん、本当にありがとうございます。大切にします」
 無邪気な笑顔でそう言う彼女をもう一度抱きしめ欲求を抑えようとしていた時、テーブルに置いてあった俺のスマホが振動した。
 "院長 秘書"の文字に嫌な予感を覚えながら出ると、普段はほとんど感情を見せない彼らしからぬ慌てた声が耳に飛び込んできた。
 「柊哉さん、今どちらですか?院長が会食先の料亭で倒れられ今運ばれたところです」
 「院長が倒れた...?容体は?」そう話す俺の声が聞こえていたようで、驚いた顔でこちらを見た後優茉は慌てて何処かへ行ってしまう。
 「詳しくはまだ。もう少しで病院に着きます」
 「分かりました」
 電話を切ると優茉が戻って来て、その手には俺のコートと車のキーが握られている...。
 「柊哉さん、早く行ってください!」
 「優茉...」
 やっと家に帰ってこられたのに、しかもクリスマスだというのに...
 「私は大丈夫ですから、すぐ病院に!」
 「...ごめん。本当に申し訳ないが今夜中に戻れるか分からない」
 「分かっています。落ち着いたら連絡下さい」

 優茉には本当に申し訳ないが病院まで急ぎ、救急に駆けつけると廊下の椅子に秘書の林さんが座っていた。
 「柊哉さん...ご自宅に帰られていたんですね。慌てて連絡してしまい、すみません」
 「いえ、父はまだ中に?」
 「はい。まだ出て来ていませんので状況はわかりません」
 私服のままだがパスは持っているので中へと入ると、すぐに俺に気づいた看護師が駆け寄ってきた。
 「香月先生!院長はあちらですよ」そう言う彼女の顔には笑みがあり、大した事はなかったのだと胸を撫で下ろした。
 処置してくれた救命医の先生によると過労だろうとの事だった。ひとまず病棟にあげ一日様子を見ることになり、個室へと移し目が覚めるのを待つ事にした。