エリート脳外科医の長い恋煩い〜クールなドクターは初恋の彼女を溺愛で救いたい〜

 久しぶりに会えた嬉しさから思わず自分からハグをすると「ただいま。なんか優茉、甘い匂いがする」とぎゅっと抱きよせ髪の毛や首の辺りをくんくんしている。
 「え?ケーキを作っていたので、そのせいかな...?」
 「作ってくれたんだ、ありがとう」
 そのまま二人でリビングへ行くと、テーブルに並べたお料理を前に、何故か彼は驚きに少し切なさが混った様な表情でフリーズしている。
 「...柊哉さん?」
 「...これ全部優茉が作ったの?」
 「クリスマスらしい料理をと思って...」
 「...嬉しいよ、大変だっただろう?今週は優茉達も忙しかっただろうし」とすぐに優しい笑顔になったけれど、さっきはどこか悲しそうな顔に見えた。
 少し気にはなったけれど、すぐに着替えに行ってしまったのでその間にケーキも運び、グラスにはノンアルコールのワインを注いだ。
 「すごいね、ケーキもお店のものみたい。こんなにたくさん大変だったよね。ありがとう、優茉」
 「いえ、久しぶりに一緒に食事が出来て嬉しいです」
 「この一週間は忙殺されたな。優茉もお疲れ様」
 「お弁当を渡せない日もあってすみません。ご飯食べてましたか?」
 「俺の方こそ受け取れない日もあって申し訳なかった。なるべく食べるようにしていたよ、また倒れるわけにいかないからね」と少しおどけて苦笑いをする。
 きっとこの病院に戻って来たばかりの頃に、過労で少し休んだ時のことを言っているんだろうけど...あの時はすごく色々な噂になっていたなぁと懐かしくなった。

 お腹がいっぱいになってしまったので一旦ケーキは冷蔵庫に戻し紅茶を淹れソファに座ると、私は意を決してプレゼントを渡した。
 「あの、大した物ではないんですけど...クリスマスプレゼント...です」
 「プレゼントまで用意してくれたの?さっきの料理だけでも十分なのに...ありがとう」
 彼の反応にドキドキしたけれど「マフラーか、嬉しい。さっそく明日から使わせてもらうよ」と満面の笑みで頭を撫でてくれた。
 「ん?これは?」
 「充電式のカイロなんです。...柊哉さん、指先が冷えている事がよくあるので温まるものがあると良いかなって...」
 「へぇ、そんな物があるんだ。実は寒い時期は、オペの前に指先を温めるのに苦労する時があるんだ。今度からはこれを使わせてもらうよ、優茉のパワーももらえそうだ」
 「ふふっ、私のパワーも充電しておきますね」
 そして最後に、袋の中に残っていた物を取り出す。
 「...これは? バスソルト...?」
 「これも身体を温めてもらえたらなぁと...。あの、その塩に含まれるミネラルが末梢神経を温めて血行を促進する作用があるんです。あと、オペで立ちっぱなしの時とかお湯の中でマッサージするとむくみの改善にも効果があるみたいで...」
 「ありがとう、ちゃんと優茉の気持ちは伝わったよ。俺の事を考えて選んでくれて本当に嬉しい。こんなに心まで温かくなるプレゼントは初めてだ」

 ...さすがにこれを入れて一緒にお風呂に入りたいとは言えなかったけれど、気持ちは伝わったみたいでよかった。ぎゅうっとハグしてくれた後「ちょっと待っていて」と自室へ入っていく。
 後ろ手に何かを待って戻ってきた彼は「優茉、これ。受け取ってくれる?」そう言って私の前に小さな箱を出しそっと開ける。
 「...え?」
 その箱には、誰もが一度は憧れる有名なジュエリーブランドのロゴが刻まれていて、箱の中には...キラキラと光に反射し眩しいほどの輝きを放つダイヤモンドが嵌め込まれた指輪。
 「優茉、俺と結婚してくれる?」
 驚いて柊哉さんの顔を見ると、少し不安の色が混ざった真剣な眼差しで射抜かれる。
 「...本当に、私で、いいんですか?」
 「俺には優茉が必要なんだ。これからもそばにいてほしい」
 「...嬉しいです。私も、ずっと柊哉さんのそばにいたいです」
 気がつけばぽろぽろと溢れ出した雫が頬を伝い、慌ててそれを拭って笑顔を作ると彼は安心した様にふっと笑って私の頬に手を添える。
 「愛してる」そっと唇を合わせてから、強く強く抱きしめられた。
 「んっ苦しいです、柊哉さん...」
 「ごめん、でももう少しだけ」と少し力を緩めて頭を撫でながら、耳元で深呼吸している。
 「優茉...俺、もう...」と彼が何かを言いかけた時、後ろでガサっとソファから物が落ちる音がした。
 ゆっくりと離れ柊哉さんが落ちた物を拾うと、それは先ほどの指輪と同じロゴが入った小さい紙袋。すると今度は自傷気味にふっと笑って「忘れていた。こっちがクリスマスプレゼント」と紙袋から何かを取り出す。
 「え?プレゼントは今...」
 「指輪はクリスマスプレゼントじゃないよ。こっちも受け取って?」と手のひら程のサイズの箱を開けると、 ローズピンクの革製のカードケース。ブランドのロゴやお花の模様が型押しされていてとても可愛らしい。
 「わぁ、可愛い...。カードケースですか?」
 「うん、キーケースにどうかと思って。優茉が今使ってる物にはカードが入らないだろう?」
 「ありがとうございます。でも、こんなに高価なものを二つも...」
 「俺にはこのプレゼントが今までもらったどんな物よりも最高に嬉しいよ。優茉の想いがたくさん込められているから。だから、優茉も俺の気持ちを受け取って?」
 小さな箱からそっと指輪を抜き取って、私の左手薬指にスッとはめてくれた。
 「...とっても、綺麗です。それにピッタリ...」