柊哉side
 あれから毎日オペが続き、彼女との接点はほぼないがこの一ヶ月で人となりはだいぶ見えた。
 熱心に患者さんの話を聞いている姿、麻痺が残る患者さんが負担にならないよう支えながらゆっくりと寄り添って歩く姿、お見舞いにきた子どもに膝をついて目線を合わせ元気付けている姿...。そして一緒に働くスタッフからも、彼女の働きぶりに信頼をよせていることがよく伝わってきた。
 あれから彼女を見かけるたび、自然と目で追ってしまっている。...俺は一体何がしたいんだ?あの時の女の子だと確信してから、気になって仕方がないのは確かだ。でも、どうしたら...?そもそもこの一ヶ月は本当に忙しく、仕事以外の事は考える暇もなかったのだけど...。
 食事は作業しながら簡単に食べられるおにぎりやサンドイッチばかり。元々食事にこだわりはなく、料理も一応出来なくはないが時間がない。家にはシャワーと寝るために帰るだけで、段ボールも結局まだ残っている。

 しかし、そんな生活が続けていた先日。六時間を超えるオペが終わりつい気が抜けたのか、着替えに戻る途中の廊下で目眩を感じ壁に手をついたが支えきれず床に膝をついた。それを看護師に見られ、ちょっとした騒ぎになってしまった。一緒にオペに入っていた水島先生に支えられながら仮眠室のベッドに横になり、目眩が治るのを目を閉じて待っていたがいつの間にか眠ってしまっていたようで、目が覚めた時には左腕に点滴が繋がれていた。
 そのおかげもあり起き上がった時には頭がスッキリとしていたが、医者がオペの後に倒れるなんて情けない...。所謂、医者の不養生というやつか。
 「ご迷惑おかけしてすみません。おかげでスッキリしました」と水島先生にお礼を伝えると「あの点滴と仮眠でスッキリって...。香月先生、今日くらいはちゃんと休んだ方がいいよ」そう言われ、先生達の気遣いもあり早めに帰ったがそのまま食事も摂らずに眠ってしまっていた。