「うん、わかればよろしい!というわけで、ちょっと診察してもいい?」とひと通り診察を終えると布団を掛け直してくれた。
「よし、OK。おしまいです。ここからは医者としての質問じゃないんだけど、香月の事は本当に知らないの?」
「はい、噂でしか...。ずっと外来受付だったので先生方にお会いする機会はあまりなくて...」
「へぇ、珍しいね。けどあいつ心配してたし、君が目覚めた事教えておいていい?」
「はい、ご迷惑をおかけして申し訳ありませんとお伝えください」
「ははっ、そんな硬いやつじゃないって。これから同じ職場だし少しずつわかっていくと思うよ。じゃあゆっくり休んでね」そう言って結城先生が出て行ってから一人になると、入院という事実がずしんと胸にのしかかった。
着替えとかどうしよう...。忙しい祖父母に頼む事も心配をかける事も気が引けるけれど、他に頼める人はいないし...そう目を閉じて考えている間に眠っていたようで、気がつけば朝の回診時間を迎えていた。
回診に来たのは優しい雰囲気の先生で、診察中何気なくネームプレートを見ると"天宮 健吾"と書いてあり、思わず「あっ」と声が漏れた。
「どうしました?」
「あの、天宮さんの...」
「はい、妻がお世話になってます」
「いえ!私の方こそいつもお世話になっております」
「ははっ、妻からよく宮野さんの話を聞いています。仕事が始まる前に顔を出したいと言っていたんですがいいですか?」
「はい、もちろんです」
その後、始業時間の十五分前にドアをノックする音が聞こえ、天宮さんが顔を出して下さった。
「優茉ちゃん!大丈夫?先週から少し体調悪そうだったものね。倒れる前に気づいてあげられなくてごめんね」
「私の方こそご迷惑おかけして本当にすみません」
「優茉ちゃんが謝る事ないわ。無理しないでゆっくり戻ってきてね?それより!昨日介抱してくれたのって香月先生だったのね!」
「私とんでもないご迷惑をおかけしてしまって...合わせる顔がありません」
「そんな事ないわよ!香月先生もすごく心配そうにしてたわ。それに優茉ちゃんの事ちょっと気になってるみたいだったし!」
はぁ、何て言って謝ったらいいんだろう。早く仕事は復帰したいけれど、その事を考えると今から憂鬱...。それでも、彼女の明るさと優しさに少し元気が出た気がした。
そして夕方にはおばあちゃんが着替えを持って病室まで来てくれた。
「優茉ちゃん心配したのよ?急に入院だなんて。いつから調子悪かったの?お薬は飲んでた?ご飯は?しっかり食べてた?」
「忙しいのにごめんね。念の為の数日間の入院だから心配しないで」
「おじいちゃんも心配しているの、しばらくこっちに帰ってきたら?おばあちゃんが優茉ちゃんの好きな物いっぱい作ってあげるわ。また大きな発作が起きて、もし一人だったらと思うと心配よ」
「ありがとう、でも本当に大丈夫だから」
「いつでも帰ってきていいのよ?あそこは優茉ちゃんの家なんだから!お店なんてどうとでもなるのよ、優茉ちゃんの方が大事に決まってるじゃない!だから遠慮なんてしないで何でも言ってね?」
「おばあちゃん...。じゃあ、退院したら少し帰るね」
今まで散々面倒を見てもらった上に忙しい二人にこれ以上面倒はかけたくないけれど、おばあちゃんの気持ちが嬉しくて目が潤みそうになった。
「いつでも待ってるわ。おじいちゃんも喜ぶわよ」と私の言葉に満足そうに笑ってくれその笑顔にまた心が癒された。
頼んでいた荷物と私の大好物である卵焼きを置いていってくれて、明るい声が無くなりシーンと再び一人になると涙腺が緩んでぽたっと涙が落ちてくる。自分が思っている以上に、不安で心が張り詰めていたのかもしれない。涙を拭って荷物から小説を出し読み始めると、ドアをノックする音が聞こえた。
「よし、OK。おしまいです。ここからは医者としての質問じゃないんだけど、香月の事は本当に知らないの?」
「はい、噂でしか...。ずっと外来受付だったので先生方にお会いする機会はあまりなくて...」
「へぇ、珍しいね。けどあいつ心配してたし、君が目覚めた事教えておいていい?」
「はい、ご迷惑をおかけして申し訳ありませんとお伝えください」
「ははっ、そんな硬いやつじゃないって。これから同じ職場だし少しずつわかっていくと思うよ。じゃあゆっくり休んでね」そう言って結城先生が出て行ってから一人になると、入院という事実がずしんと胸にのしかかった。
着替えとかどうしよう...。忙しい祖父母に頼む事も心配をかける事も気が引けるけれど、他に頼める人はいないし...そう目を閉じて考えている間に眠っていたようで、気がつけば朝の回診時間を迎えていた。
回診に来たのは優しい雰囲気の先生で、診察中何気なくネームプレートを見ると"天宮 健吾"と書いてあり、思わず「あっ」と声が漏れた。
「どうしました?」
「あの、天宮さんの...」
「はい、妻がお世話になってます」
「いえ!私の方こそいつもお世話になっております」
「ははっ、妻からよく宮野さんの話を聞いています。仕事が始まる前に顔を出したいと言っていたんですがいいですか?」
「はい、もちろんです」
その後、始業時間の十五分前にドアをノックする音が聞こえ、天宮さんが顔を出して下さった。
「優茉ちゃん!大丈夫?先週から少し体調悪そうだったものね。倒れる前に気づいてあげられなくてごめんね」
「私の方こそご迷惑おかけして本当にすみません」
「優茉ちゃんが謝る事ないわ。無理しないでゆっくり戻ってきてね?それより!昨日介抱してくれたのって香月先生だったのね!」
「私とんでもないご迷惑をおかけしてしまって...合わせる顔がありません」
「そんな事ないわよ!香月先生もすごく心配そうにしてたわ。それに優茉ちゃんの事ちょっと気になってるみたいだったし!」
はぁ、何て言って謝ったらいいんだろう。早く仕事は復帰したいけれど、その事を考えると今から憂鬱...。それでも、彼女の明るさと優しさに少し元気が出た気がした。
そして夕方にはおばあちゃんが着替えを持って病室まで来てくれた。
「優茉ちゃん心配したのよ?急に入院だなんて。いつから調子悪かったの?お薬は飲んでた?ご飯は?しっかり食べてた?」
「忙しいのにごめんね。念の為の数日間の入院だから心配しないで」
「おじいちゃんも心配しているの、しばらくこっちに帰ってきたら?おばあちゃんが優茉ちゃんの好きな物いっぱい作ってあげるわ。また大きな発作が起きて、もし一人だったらと思うと心配よ」
「ありがとう、でも本当に大丈夫だから」
「いつでも帰ってきていいのよ?あそこは優茉ちゃんの家なんだから!お店なんてどうとでもなるのよ、優茉ちゃんの方が大事に決まってるじゃない!だから遠慮なんてしないで何でも言ってね?」
「おばあちゃん...。じゃあ、退院したら少し帰るね」
今まで散々面倒を見てもらった上に忙しい二人にこれ以上面倒はかけたくないけれど、おばあちゃんの気持ちが嬉しくて目が潤みそうになった。
「いつでも待ってるわ。おじいちゃんも喜ぶわよ」と私の言葉に満足そうに笑ってくれその笑顔にまた心が癒された。
頼んでいた荷物と私の大好物である卵焼きを置いていってくれて、明るい声が無くなりシーンと再び一人になると涙腺が緩んでぽたっと涙が落ちてくる。自分が思っている以上に、不安で心が張り詰めていたのかもしれない。涙を拭って荷物から小説を出し読み始めると、ドアをノックする音が聞こえた。
