The previous night of the world revolution5~R.D.~

しかし。

「…ごめん。私も、彼らの所属組織は分からなかった」

「…」

「全員サングラスに黒マスクをつけてたし…。彼らの上官らしき人もいたけど、その人もガスマスクをつけて、何も見せなかった」

「…そうですか」

アイズのことだ。

拷問を受けながらも、助かったときの為に、敵の特徴を出来るだけ観察していたはず。

そのアイズが「分からない」と言うのだ。

本当に分からないのだろう。

分からないように…奴らは、こちらに一切の情報も提供しないよう、徹底していたのだ。

「…厄介な相手ね」

「…シュノさんの言う通りですよ」

拠点に何の情報も残さず、拷問中でさえ、一切ボロを出さないとは。

「制服とか…何かエンブレムとかは?つけてなかったのか?」

「何も。服装は、何処にでも売ってる工務店の作業服。エンブレムもなかった」

…それじゃ、何の手がかりにもならないな。

「じゃあどうやって探せば良いんだよ!アイ公にここまでしてくれたんだ。アリューシャが脳天撃ち抜いてやる!でなきゃ気が済まない!」

ベッドの上で、アリューシャが喚いた。

「そんなこと言ってもな、アリューシャ…。お前、肋骨折れてるし、筋肉痛だし…。狙撃はまだ無理だろ?」

「何をぅ!ルル公おめぇ、アリューシャを舐めたな!?アリューシャから狙撃取ったら、何も残らねぇんだぞ!死ぬまで、いや、死んでもライフルにしがみついててやらぁ!」

勇ましくそう言って、アリューシャは飛び起きようとした。

頼もしいことこの上ない。

しかし。

「いでででで!いでー!」

「…当たり前だろ…」

「アリューシャ。無理しちゃ駄目だよ」

超絶スナイパー、筋肉痛に勝てず。

仕方ない。あんな弾四発も撃ったんだもん。命あっただけめっけもんだよ。

「くっそ、おのれぇ…!アリューシャのスナイパー魂は…こんなものじゃねぇはずだろ…!」

「分かってる。アリューシャのスナイパー魂は不屈だって分かってるよ。分かってるから、今は治るまで大人しくしてよう」

「うぅ…。ごめんなアイ公…!アリューシャ、役に立たなくて…!」

「そんなことないよ。助けてもらって、本当に感謝してるよ。ありがとう、アリューシャ。頑張ったね」

「…アイ公~…」

うるうる、と半泣きのアリューシャ。

素晴らしい。感動の場面だ。

ここに水を差すのは野暮だけれども。

アリューシャを、少しでも安心させる為にも。

「まぁ、全くノーヒントって訳じゃありませんから。現場に残ってる足跡や指紋なんかを、鑑識班に調べさせてます。何か出てくるかもしれません」

「…それで、敵分かんの?」

「今はまだ調査中なので、何とも。でも、必ず仇は討ちますよ」

我らのアイズレンシアを傷つけてくれたお礼は、たっぷりしなければ。

『青薔薇連合会』の名が廃るというものだ。