The previous night of the world revolution5~R.D.~

病室内に、緊張が走った。

「…捕虜は、捕まえられなかったの?」

「アイズを発見したという連絡が入ってすぐ、上にいた敵構成員を何人か捕らえたわ。拷問して、所属組織を吐かせようと思って…」

アイズの問いに、シュノさんが答えた。

しかし、シュノさんの顔は暗かった。

「でも、拷問するまでもなかった。私達に捕まった時点で、全員、口内に仕込んだ毒で自決したわ」

「…」

…随分徹底しているものだ。

生きて虜囚の辱しめを受けず、ってか?

こちらとしては、良い迷惑だ。

アリューシャが壁を破壊した時点で、工場内に潜んでいた敵部隊の主要人物は、俺達の包囲を振り切って逃げたらしい。

取り残された下級構成員達は、全員俺達に殺されるか、あるいは自決した。

あの場所を再度捜索したが、敵の素性に繋がる証拠は、何も残されていなかった。

拷問のやり方、そして脱出の際に、痕跡を残さないこの手腕…。

間違いなく、俺達の同業者。

それも、かなり手練れだ。

舐めてかかって良い相手じゃない。

敵を逃がさないように、俺達ももっと徹底した包囲をしても良かった。

敵構成員の鹵獲を優先しようと思えば、それは出来た。

しかし、あのとき俺達の最優先事項は、アイズだった。

アイズを取り戻すことが目的で、それ以外は二の次だった。

二兎追う者は、一兔も得ず。

俺は確実にアイズを奪還することだけに集中し、敵の鹵獲は後回しにした。

作戦指揮官として、俺はこの判断を、間違っていたとは思わない。

いくら敵を捕まえたって、アイズを取り返せないんじゃ、何の意味もないのだから。

「…思い出したくないでしょうけど、何か思い出せませんか?敵の素性に繋がる情報…」

どんな些細な情報でも良い。

拷問官の顔、服装、携帯している武器。

何でも良い。

何か特徴を思い出せれば、それを手繰って、アイズ拉致事件の犯人を特定出来るかもしれない。