…人を。
ルリシヤを。
何だと…思ってるんだ。
「…政略結婚自体は、貴族の間では珍しくありません。この僕も、抵抗しなければ同じような目に遭っていたでしょうから」
と、ルーチェス。
そうだろう。王候貴族にとっては、政略結婚なんて珍しい話ではないのだろう。
でも、だからって。
自分が追い出した人間を、都合の良い道具みたいに。
「…絶対に許さない」
ルリシヤを、道具にするなんて。
そんなことはさせない。
何としてでも。
大体。
「ルリシヤは『青薔薇連合会』の幹部だ。マフィアなんだ。貴族からも追放されてる。そんな人間が、戻ろうとしたからって貴族に戻れるのか?」
貴族権は、生まれながらに持っているもの。
一度剥奪されれば、二度と取り戻すことは出来ないはず。
好き勝手に貴族になったり、一般人になったり、また貴族に戻ったり…なんて。
そんなことが許されるとは思えない。
ましてや、ルリシヤはただの一般人ではない。
マフィアなのだ。
それも、ルティス帝国最大のマフィア、『青薔薇連合会』の幹部。
そんな人間が、貴族に戻るなんて。
「確かに、そこはネックだと思います。普通に考えれば、一度貴族から追放された人間が、また貴族に戻る…それは不可能です」
そうだよな。
「でも、例外はあります」
「例外…」
「ルレイア師匠なんて、良い例でしょう?」
「…!」
ルレイア、だと?
「ルレイア師匠は、無実の罪で不当に貴族権を剥奪されました。だから、彼の冤罪が晴らされたとき、ルレイア師匠にはウィスタリア家に戻る権利を得ていました」
「…それは」
そういえば、そうだった。
貴族になんて二度と戻りたくない、と…ルレイアは一瞬で蹴っ飛ばしたが。
ルレイアの冤罪が晴らされたとき、ルレイアには、ウィスタリア家に戻るという選択肢を与えられた。
不当に奪われた貴族権を取り戻した。
ルレイアは、取り戻したその権利を行使せず、握り潰してしまったが。
あのとき、戻ろうと思えば、戻れたのだ。
「それと同じです。ルリシヤさんも、元々は不当に家を追われています。多少こじつけにはなりますが…。貴族に戻す、口実はあるんです。『ルリシヤ・サタル・クレマティスは不当に家を追われたから、貴族権破棄を撤回し、貴族権を復活させる』という口実が」
「そんなことが…本当に出来るのか…!?」
言うは易し、だが実際にそんなこじつけじみた言い分を通すのは…。
「それに、ルリシヤはマフィアなんだぞ。マフィアをやっていた人間を、貴族になんて…」
貴族というのは、何よりも体面を気にする。
元マフィアの貴族なんて、体面が悪くて、とても戻せないだろう。
しかし。
「むしろ、それを逆手に取ってるんだと思います」
「何…?」
「『少年期に不当に貴族権を奪われたせいで、道を踏み外し、非合法組織に入った…。だからこそ貴族に戻して、真っ当な道に戻す』。そういう主張です」
「…!そんな詭弁が」
「罷り通るんですよ、貴族の社会では。貴族としての利権、体面…そんな下らないものを守る為なら、どんな詭弁でも罷り通る」
「…」
…少し前まで王侯貴族だったルーチェスが、そう言うのだ。
言葉の重みが違う。
「…元上流貴族の身として言わせてもらうと、俺もルーチェスと同意見です」
名家ウィスタリア家出身のルレイアも、ルーチェスと同じ意見。
俺みたいな、一般市民の…下の下の生まれには分からない。
貴族には、貴族にしか分からない道理がある。
そしてその、下らない道理の為に…振り回され、翻弄され…人生を壊される者がいる。
ルリシヤのように。
…ルレイアのように。
ルリシヤを。
何だと…思ってるんだ。
「…政略結婚自体は、貴族の間では珍しくありません。この僕も、抵抗しなければ同じような目に遭っていたでしょうから」
と、ルーチェス。
そうだろう。王候貴族にとっては、政略結婚なんて珍しい話ではないのだろう。
でも、だからって。
自分が追い出した人間を、都合の良い道具みたいに。
「…絶対に許さない」
ルリシヤを、道具にするなんて。
そんなことはさせない。
何としてでも。
大体。
「ルリシヤは『青薔薇連合会』の幹部だ。マフィアなんだ。貴族からも追放されてる。そんな人間が、戻ろうとしたからって貴族に戻れるのか?」
貴族権は、生まれながらに持っているもの。
一度剥奪されれば、二度と取り戻すことは出来ないはず。
好き勝手に貴族になったり、一般人になったり、また貴族に戻ったり…なんて。
そんなことが許されるとは思えない。
ましてや、ルリシヤはただの一般人ではない。
マフィアなのだ。
それも、ルティス帝国最大のマフィア、『青薔薇連合会』の幹部。
そんな人間が、貴族に戻るなんて。
「確かに、そこはネックだと思います。普通に考えれば、一度貴族から追放された人間が、また貴族に戻る…それは不可能です」
そうだよな。
「でも、例外はあります」
「例外…」
「ルレイア師匠なんて、良い例でしょう?」
「…!」
ルレイア、だと?
「ルレイア師匠は、無実の罪で不当に貴族権を剥奪されました。だから、彼の冤罪が晴らされたとき、ルレイア師匠にはウィスタリア家に戻る権利を得ていました」
「…それは」
そういえば、そうだった。
貴族になんて二度と戻りたくない、と…ルレイアは一瞬で蹴っ飛ばしたが。
ルレイアの冤罪が晴らされたとき、ルレイアには、ウィスタリア家に戻るという選択肢を与えられた。
不当に奪われた貴族権を取り戻した。
ルレイアは、取り戻したその権利を行使せず、握り潰してしまったが。
あのとき、戻ろうと思えば、戻れたのだ。
「それと同じです。ルリシヤさんも、元々は不当に家を追われています。多少こじつけにはなりますが…。貴族に戻す、口実はあるんです。『ルリシヤ・サタル・クレマティスは不当に家を追われたから、貴族権破棄を撤回し、貴族権を復活させる』という口実が」
「そんなことが…本当に出来るのか…!?」
言うは易し、だが実際にそんなこじつけじみた言い分を通すのは…。
「それに、ルリシヤはマフィアなんだぞ。マフィアをやっていた人間を、貴族になんて…」
貴族というのは、何よりも体面を気にする。
元マフィアの貴族なんて、体面が悪くて、とても戻せないだろう。
しかし。
「むしろ、それを逆手に取ってるんだと思います」
「何…?」
「『少年期に不当に貴族権を奪われたせいで、道を踏み外し、非合法組織に入った…。だからこそ貴族に戻して、真っ当な道に戻す』。そういう主張です」
「…!そんな詭弁が」
「罷り通るんですよ、貴族の社会では。貴族としての利権、体面…そんな下らないものを守る為なら、どんな詭弁でも罷り通る」
「…」
…少し前まで王侯貴族だったルーチェスが、そう言うのだ。
言葉の重みが違う。
「…元上流貴族の身として言わせてもらうと、俺もルーチェスと同意見です」
名家ウィスタリア家出身のルレイアも、ルーチェスと同じ意見。
俺みたいな、一般市民の…下の下の生まれには分からない。
貴族には、貴族にしか分からない道理がある。
そしてその、下らない道理の為に…振り回され、翻弄され…人生を壊される者がいる。
ルリシヤのように。
…ルレイアのように。


