The previous night of the world revolution5~R.D.~

「…なんて忌まわしい話だ」

「…同感です」

恥という感情はないのか。

自分が追い出した癖に。

散々酷い仕打ちをした癖に。

都合が悪くなったら、助けてくれとせがむなんて。

「そいつ、ルリシヤがマフィアだってこと知ってるのか…?」

知っていて、金回りが良さそうだから、借金を肩代わりしてくれって?

「知ってるんでしょうね。一般人にはとても払えない額ですし。ルリシヤさんなら払えると踏んだんでしょう」

「…」

…腹立たしい。

本当に腹立たしい。

「金を返してくれるなら、黒い金でも良いってことか…」

マフィアの金は、真っ当な手段で得た金ではない。

それでも金には変わりないと…。

「…いえ、むしろ…それだけだったら、話は早いと思うんです」

「は?」

「僕が思うに、状況はもっと厄介なんですよ」

今でも充分厄介なのに、これ以上何が厄介なんだ?

「ルリシヤさんの立場に立って、考えてみてください。『金に困ったから援助してくれ』と頼まれたら、彼なら、ポンと返して、それで終わりにすると思いませんか」

「…そうだな」

ルリシヤの資金力は、『青薔薇連合会』でも飛び抜けている。

クレマティス家の借金なんて、いくら高額であろうと、ルリシヤには大して痛くもないだろう。

あいつの性格からしても…。金で解決出来るなら…俺達に何も言わず、何の心配もかけず解決出来るなら…言われた通りの額を払うだろう。

俺だったら、そんなの、無視しておけば良いと思うけど。

ルリシヤなら…きっと、『青薔薇連合会』に類が及ぶことを嫌って、自分だけで解決しようとするはずだ。

「そこで、更に掘り下げて調べてみたら…。ルティス帝国のとある大企業が、クレマティス家とやり取りしてることが分かったんです」

「…?」

…大企業とのやり取り?

クレマティス家と?

「やり取りの内容は、縁談です。その大企業の社長が、自分の娘をクレマティス家に嫁がせたいという話を、クレマティス家の当主に持ちかけているんです。莫大な持参金を持たせてね」

「…!?」

「政略結婚って奴です。大企業の社長さんは、娘を貴族と結婚させれば、貴族の末席に自分の名前が載ることになる。一方クレマティス家は、嫁いでくる娘が持ってくる持参金で、借金を返すことが出来る…」

…なんて。

「だから、僕が思うにクレマティス家の当主の目的は、ルリシヤさんに金を出させて、借金を返させることではないんです」

なんて、卑劣な。

「ルリシヤさんをクレマティス家に戻して、その大企業の娘と結婚させ、持参金を取り上げて借金を返す。ルリシヤさんを、政略結婚の道具にしようとしてるんだと思います」

「…っ」

あまりの卑劣な計画に、俺は吐き気を催しそうになった。