The previous night of the world revolution5~R.D.~

ルリシヤは俺と打って変わって落ち着いた様子で、アイズの傍らにしゃがみ込んだ。

アイズの手首を取り、正確な手付きで脈を測りながら、アイズに呼び掛けた。

「アイズ先輩。聞こえるか。ルリシヤだ。分かるか?」

「…」

ルリシヤが呼び掛けると、アイズはようやく、薄く目を開いた。

ルリシヤは指を三本立てて、アイズに見せた。

「見えるか?何本か分かるか?」

「…三…」

掠れる声で、アイズが答えた。

良かった…意識はある。

「よし、もう安心してくれ。俺達が助けに来たからな」

ルリシヤはアイズにそう声をかけ、後ろを向いて、アイズに聞こえないよう、小声でインカムでルレイアに報告した。

「こちらルリシヤ。ルレイア先輩、アイズ先輩を見つけた」

『分かりました。アイズの容態と、現在地を教えてください』

「意識はあるが、脈が弱ってる。右腹部からの出血と…右前腕部の骨折、その他打撲箇所多数。現在地は地下室。工場奥の右手通路の突き当たりに、隠し扉がある。そこを下ったら地下室だ。位置情報送信する」

『了解。即時医療班を回します』

わざわざ小声で言うのは、アイズ本人に自分の容態を知らせない為だ。

知らせたら、ショックで悪化する恐れがある。

とはいえ、アイズ本人は自分の容態について、既に分かっているだろうが…。

「それから、こちらで応急措置だけ行わせてもらう」

『分かりました。医療班に伝えておきます』

通話を切るなり、ルリシヤはアイズに向き直った。

「アイズ先輩、痛むだろうが、少し止血措置だけさせてくれ」

骨折はともかく、止血は急がなければ。

アイズは既にかなりの出血をしており、このまま放置しておけば、命に関わる。

医療班を待機させてはいるが、この場に到着するまで多少の時間がかかる。

特に出血が酷いのは、右腹部の裂傷だ。

鋭いナイフで、抉られたようになっている。

思わず目を背けたくなるような傷だ。

しかし、ルリシヤは何処までも冷静で、躊躇いなく傷口を直視した。

「アイズ先輩、内臓には達してなさそうだから大丈夫だ」

「…あぁ…そう…」

「今から止血する。少し我慢してくれ」

ルリシヤは、慣れた手付きで止血処置をした。

アイズの苦悶の表情に、俺は心を抉られる思いだった。

…もっと早く、助けに来ていれば。

アイズにこんな辛い思いを、させずに済んだものを…!