The previous night of the world revolution5~R.D.~

また、別の日。



「ルーチェス君~。良い匂い~」

セカイお姉ちゃん、って言うかセカイさんが、ひょっこりとキッチンにやって来た。

どうやら嗅ぎ付けたらしい。

オーブンから漂ってくる、芳ばしくて甘い香りを。

「ねーねー何作ってるの?」

「内緒です」

「えー教えてよ~」

出来てからのお楽しみ、ってね。

しかし。

「お姉ちゃんに隠し事をするとは、けしからん弟だ!そんな悪い弟は、お腹をぷにぷにするぞ」

「ぷにぷにって…。僕、ぷにるほど贅肉ついてないですよ。セカイさんじゃないんだか、」

「あら~躾のなってない弟だこと!今何て言ったのかな~?」

「いたたたたた済みません。何も言ってないです」

耳たぶを引っ張られた。

ちぎれるかと思った。

「白状しなさい。お姉ちゃんに隠れて、何作ろうとしてるの」

「隠れて、って隠してはないですけど…。アップルパイです」

「えっ、アップルパイ?」

「えぇ。前、テレビ観て食べたいって言ってましたから」

帝都にある何処ぞのカフェの名物が、焼きたてのアップルパイだって特集をしてて。

それを観ていたセカイさんが、「美味しそう」と言っていたのである。

じゃあ作ってみようかな、と。

「買ってきてくれるんじゃなくて、自分で作ろう、って思うのがルーチェス君の良いところだよね」

「?」

僕は何か、おかしなことでもしただろうか。

「でも嬉しい!可愛いことしてくれるのう~ルーチェス君は~。ういのう、ういのう」

わしゃわしゃ、と頭を撫でられる。

同時に、オーブンが焼き上がりを知らせる電子音を鳴らした。