The previous night of the world revolution5~R.D.~

ちなみに。

コトコトと牛テールを煮込みながら。

「あー!ルーチェス君早い!」

「え?何が?」

「パズルだよ!私、まだちょっとしか出来てないのにぃ」

あ?

セカイさんの手元を見ると、ジグソーパズルの右端の部分が10ピースほど、ちまっとくっついているだけだった。

一方、同時に始めたはずの僕のパズルは、既に左端から真ん中にかけての部分が完成していた。

「何でそんなに早いの?」

「何でと言われても…。パズルの完成図と、ピースの形を見て、こっちのピースはこっちのピースに繋がるんだな、と判断してるだけで…」

「何でそんなこと出来るの!?」

…普通…なんじゃないの?

パズルってそういうものかと思っていたんだが…。

「もしかしてルーチェス君、王宮でパズルばっかりやってた?パズル王子?」

「いえ、初めてですけど」

「…」

「…どうしました?」

「…ルーチェス君の馬鹿ぁ!」

また馬鹿って言われた。

パズルが得意なことは馬鹿なのか。

「何でそんなに何でも出来るのよ~!このっ、このっ」

「ちょ、脇くすぐらないでくださいって…」

「ルーチェス君は弟なんだからなー!私の方がお姉ちゃんなんだから!セカイお姉ちゃんとお呼びなさい!」

「えぇ…?」

「お呼びなさい!」

「…セカイお姉ちゃん…」

「宜しい」

…何故?

怒る基準は何処?

「セカイさんはパズル、」

「お姉ちゃん!」

「…セカイお姉ちゃんはパズル、好きなんですか?」

「好きだよー。時間があるときにね、ちょこちょこやるの」

へぇ。

それは良いことを聞いた。

「でもルーチェス君と一緒にやると、あっという間に出来ちゃうよ。楽しみが薄れる~」

「はぁ、済みません…」

「も~ルーチェス君ったら、何でも器用にこなしちゃうんだから!この間だって、お仕事から帰ってきて、ささーっとロールキャベツ作ってくれたし」

あぁ、あれは美味しかったね。

しかし、器用に出来ることで小言を言われるとは。

こんなときは、自分の天才肌が恨めしい。

「その前は、美味しいアヒージョ作ってくれたし…。アクアパッツァも美味しかったなぁ」

まぁよく覚えててくれて。

有り難い。

そんなに喜んで食べてくれると、こちらとしても作り甲斐がある。

「この間の朝ご飯の手作りピザも、凄く美味しかったよ」

「それは良かったです」

生地からこねて作った、力作だったからな。

喜んでくれたなら良かった。

「で、今日も美味しい牛テール煮込みでしょ?あぁ、ルーチェス君は凄いなぁ。可愛いのう、可愛いのう。セカイお姉ちゃんがなでなでしてあげよう」

なでなで、と撫でられる。

…飼い主に褒められた犬の気分。

「牛テールの方は、まだ美味しいか分かりませんけどね。今煮込み中なんで」

「美味しいに決まってるよ。ルーチェス君のご飯だもん」

何だか随分信頼されているようで。

それで美味しくなかったら、興醒めも良いところだが…。



その後一緒に食べた牛テールのワイン煮込みは、ちゃんと美味しかった。

良かった。