The previous night of the world revolution5~R.D.~

「…何?」

僕、今ちょっとテンション上がってたところだったんですけど。

邪魔しに来るとか何?

皇太子のパーリーナイトを邪魔するとか何?

「殿下、こちらをごら…って、またあなたは、何を読んでいらっしゃるのですか!」

「エロ本ですよ」

「えっ…!な、なんというものを!」

そんな時間に来るのが悪いだろ。

今はそういう時間だ。

「いや、それより!殿下!もうそんなものは必要ありませんぞ!」

…は?

僕にエロ本が必要ないって、そんなの世界の誰が決めたんだ。

僕にエロ本が必要かどうかは、僕が決めることだ。

もっと正しく言うなら、僕の性欲が決めることだ。

誰だ。勝手に決めたのは。

「こちらをご覧ください!」

レスリーは、ほくほく顔でそれらを手渡してきた。

…何だこれは。

仕方なく、僕は開きかけたエロ本を閉じて脇に置き。

レスリーが渡してきたものを、ぱらりと開いた。

一冊三ページほどのその冊子には、一ページ目に大きな顔写真が乗っていた。

何?この証明写真。

「…あなた、何考えてるんですか」

「は?」

「普段エロ本で抜いてる僕が、今更こんな証明写真で抜ける訳ないじゃないですか!」

馬鹿にしてるのか僕を。

女に免疫のない童貞なら、ちょっと鮮明な証明写真くらいで抜けるだろうと。

言っとくが僕は童貞じゃないし、こんな証明写真で抜けるほどウブではない。

舐めてもらっては困る。

「そ、そういう意味で言っているのではありません!」

顔真っ赤のレスリー。

エロ本の代わりに渡してくるんだから、そういう意味じゃないのか。

じゃあどういう意味だ。

すると。

「…ん?」

写真の二ページ目に、やたら長ったらしい名前と、学歴、経歴、家族歴らしきものが長々と書いてあった。

三ページ目も全部、そんな感じ。

これって…もしかして。

「良いですか、殿下。これは、お見合い写真です」

「…」

「殿下の、未来の妃となる方の候補でございます」

「…」

「皇太后様と相談致しまして、殿下には、そろそろ身を固めて頂こうというお話になりました。そこで、殿下にはこの中から、お妃様を選んで頂きます」

「…」

「これで、もうエロ本などという低俗なものを読む必要はありませんぞ。殿下もそろそろ妻帯なさって、そしてお子を授かり、ベルガモット王室の正当な世継ぎを…」

「…」

「…殿下?」

…レスリーが。

僕に、何を期待しているのかは分かった。

しかし。

「…ゴミですよ、こんなもの」

僕は、ベッドサイドのゴミ箱に、見合い写真を投げ捨てた。

「あぁっ!殿下、なんということを!この娘達は、殿下に相応しい上流貴族のご息女達で…」

「必要ありません」

「何故です!殿下も皇太子たる者、いずれはご結婚なさらなくては…」

「結婚は勿論しますよ」

俺に結婚願望がないなんて、いつ言った。

結婚願望はある。

「ならば、その中からお妃様を…」

「結婚相手なら、もう決まってますよ」

「…は?」

「婚約済みなので。既に」

「…………………は?」

そのときのレスリーの顔は。

観測史上、もっとも間抜けであった。