The previous night of the world revolution5~R.D.~

その後。

レスリーは、怒りのままにどしどしと歩き、皇太后の部屋を訪れた。

「皇太后様!お忙しいところ、失礼致します」

別に母は忙しくはないはずだが。

女王であるアルティシアと違って、特に公務らしい公務はしていないのだから。

「どうしました、レスリー」

「僭越ながら申し上げます。ご子息であるルーチェス殿下のことですが」

「あの子が、どうかしましたか」

「以前から、何度も、何度も、殿下の脱走癖については申し上げてきたことと存じます」

「…そうですね」

「レスリーは、殿下のこれらの行為を、単なる若気の至りと信じ、殿下が自ら過ちに気づき、更正してくださることを期待して、目を瞑っておりました…」

目を瞑っていたと言う割には、結構口うるさくガミガミ言われてた気もするが。

すると。

「しかし!」

レスリーは、くわっ、と目を見開いた。

「殿下は素行を改めるどころか、この頃ますます酷くなっております!昼間のみならず、夜間にまで外出なされているようで!メイドや使用人の真似事をし、い、い、いかがわしい本ばかりを読み、授業や芸術の稽古を蔑ろにしておられます!」

「…」

「このままでは、殿下は王族としての自覚も忘れ、悪い仲間を作られるやもしれません!」

実は既にマフィアと関わりがあると知っていたら、レスリーは卒倒していただろうな。

おまけに、風俗店にまで出入りしているのだから。

「ここはどうか!母君である皇太后様の口から、殿下をお叱りくださいませ。不肖このレスリーには、もう手に負えませぬ!」

それは申し訳ない。

すると。

「…」

母は少し黙り、そして口を開いた。

「…レスリー」

「はい」

「あの子…ルーチェスは今、いくつだったかしら」

「は…。殿下のお歳ですか?それなら…」

レスリーは、僕の年齢を母に伝えた。

我が子が何歳になるのかすら、覚えていない母親である。

「そう…。もう、そんな歳になるのですね」

「はい。そうだというのに、未だに王族としての自覚が…」

「丁度良いです。なら、あの子を結婚させましょう」

「…は?」

僕は、この場には居合わせていなかったが。

もしレスリーと一緒に、この場にいたとしたら。

きっと僕も、レスリーと全く同じ反応をしたことだろう。

何故、そうなるのかと。