その日。
僕は、厨房を借りて作った手作り小籠包を食べながら、本を読んでいた。
おやつの代わりである。
なんてジューシーなスープだ。美味しい。
粉から作った生地も、もちもちして良い食感。
もしかして、僕は天才か。
しかし。
「殿下っ!」
「…ん?」
そんな僕のおやつタイムに、レスリーが乱入してきた。
「…はふはふ。どうかしました?」
口の中が小籠包で一杯。
「聞きましたぞ!また厨房を借りて、キッチンメイドの真似事をされたとか!」
「小籠包作ったんですよ。ちょっと食べてみてください」
「はっ!?熱っ」
レスリーの口に、無理矢理小籠包を押し込んだ。
まぁとりあえず食べてみてくれ。
「む、むむっ…あ、熱い…」
小籠包だからね。
「で、でも。これはなかなか…」
「あっ、美味しいですか?」
「えぇ。とても美味…はっ!」
は?
「そういう話をしているのではありません!」
「美味しいんだから、良いじゃないですか」
これが不味いんだったら、救いようがないけど。
それなのに、レスリーは。
「良くありません!皇太子殿下ともあろう方が、メイドの真似事など!」
メイドの真似事って…。それはメイドに失礼では?
あの人達が頑張ってくれているから、僕は毎日食事にありつけるのだ。
「殿下はもっと、王族としての自覚を…は!?」
は?
「な、何を読んでいらっしゃるのですか…!?」
「あ、これですか?」
僕がおやつを食べながら、読んでた「おやつ」。
これは良いものだよ。
「先日買ったばかりのBLエロコミック。僕の好きな作者の新作なんですよ」
「な…な…」
「今回は、夜の街で男娼をしている受けが、客である責めに出会って、愛を育んでいくという純愛BLラブストーリーです。丁度今、抜か二でだいしゅきホールドしてる場面で、」
「殿下っ!!」
「はい?」
気に食わなかったか。このシチュエーションが。
僕は好きだけどな。
しかし、レスリーは。
「レスリーは…レスリーは、もう堪忍袋の緒が切れましたぞ!」
…お?
「このところ、料理だの掃除だの、メイドの真似事ばかりなさって!カップ麺だの、え、え、エロ本だの、いかがわしいものばかりにうつつを抜かして!」
「でも、勉強とかは割と真面目にやってるじゃないですか」
「それとこれとは話が別ですっ!殿下には、もう心を入れ換えて頂かなくては!」
入れ換える?
僕の心臓を?
移植?
「最近の殿下の素行の悪さを、全て皇太后様にご報告させて頂きます!」
…何だと?
「これを機に、心を入れ換えなさいませ!良いですね!」
そう吐き捨てるなり、レスリーはどたどたと部屋を出ていった。
…。
…とりあえず、小籠包食べようか。
もぐ。
「…」
皇太后様というのは、僕の母親のことである。
いたのか、って感じだと思うけど。
いたんだ。実はな。
ローゼリア姉の前国王だった父上が亡くなった後、王位継承権第一位だったのは、その妻である皇太后、つまり僕の母親だった。
しかし、母は亡き父に遠慮してか、それとも自分に国王という重圧を背負わされることを嫌がってか。
自ら王位継承権を娘、つまりローゼリアに譲った。
そして、自分は皇太后として、王宮でひっそりと暮らしているのである。
母に言いつける…ねぇ。
先生に言ってやろ!と変わらないレベルの告げ口だが。
「…はぁ」
何だか嫌な予感がして、僕は気が重い。
僕は、厨房を借りて作った手作り小籠包を食べながら、本を読んでいた。
おやつの代わりである。
なんてジューシーなスープだ。美味しい。
粉から作った生地も、もちもちして良い食感。
もしかして、僕は天才か。
しかし。
「殿下っ!」
「…ん?」
そんな僕のおやつタイムに、レスリーが乱入してきた。
「…はふはふ。どうかしました?」
口の中が小籠包で一杯。
「聞きましたぞ!また厨房を借りて、キッチンメイドの真似事をされたとか!」
「小籠包作ったんですよ。ちょっと食べてみてください」
「はっ!?熱っ」
レスリーの口に、無理矢理小籠包を押し込んだ。
まぁとりあえず食べてみてくれ。
「む、むむっ…あ、熱い…」
小籠包だからね。
「で、でも。これはなかなか…」
「あっ、美味しいですか?」
「えぇ。とても美味…はっ!」
は?
「そういう話をしているのではありません!」
「美味しいんだから、良いじゃないですか」
これが不味いんだったら、救いようがないけど。
それなのに、レスリーは。
「良くありません!皇太子殿下ともあろう方が、メイドの真似事など!」
メイドの真似事って…。それはメイドに失礼では?
あの人達が頑張ってくれているから、僕は毎日食事にありつけるのだ。
「殿下はもっと、王族としての自覚を…は!?」
は?
「な、何を読んでいらっしゃるのですか…!?」
「あ、これですか?」
僕がおやつを食べながら、読んでた「おやつ」。
これは良いものだよ。
「先日買ったばかりのBLエロコミック。僕の好きな作者の新作なんですよ」
「な…な…」
「今回は、夜の街で男娼をしている受けが、客である責めに出会って、愛を育んでいくという純愛BLラブストーリーです。丁度今、抜か二でだいしゅきホールドしてる場面で、」
「殿下っ!!」
「はい?」
気に食わなかったか。このシチュエーションが。
僕は好きだけどな。
しかし、レスリーは。
「レスリーは…レスリーは、もう堪忍袋の緒が切れましたぞ!」
…お?
「このところ、料理だの掃除だの、メイドの真似事ばかりなさって!カップ麺だの、え、え、エロ本だの、いかがわしいものばかりにうつつを抜かして!」
「でも、勉強とかは割と真面目にやってるじゃないですか」
「それとこれとは話が別ですっ!殿下には、もう心を入れ換えて頂かなくては!」
入れ換える?
僕の心臓を?
移植?
「最近の殿下の素行の悪さを、全て皇太后様にご報告させて頂きます!」
…何だと?
「これを機に、心を入れ換えなさいませ!良いですね!」
そう吐き捨てるなり、レスリーはどたどたと部屋を出ていった。
…。
…とりあえず、小籠包食べようか。
もぐ。
「…」
皇太后様というのは、僕の母親のことである。
いたのか、って感じだと思うけど。
いたんだ。実はな。
ローゼリア姉の前国王だった父上が亡くなった後、王位継承権第一位だったのは、その妻である皇太后、つまり僕の母親だった。
しかし、母は亡き父に遠慮してか、それとも自分に国王という重圧を背負わされることを嫌がってか。
自ら王位継承権を娘、つまりローゼリアに譲った。
そして、自分は皇太后として、王宮でひっそりと暮らしているのである。
母に言いつける…ねぇ。
先生に言ってやろ!と変わらないレベルの告げ口だが。
「…はぁ」
何だか嫌な予感がして、僕は気が重い。


