The previous night of the world revolution5~R.D.~

その日。

僕は、厨房を借りて作った手作り小籠包を食べながら、本を読んでいた。

おやつの代わりである。

なんてジューシーなスープだ。美味しい。

粉から作った生地も、もちもちして良い食感。

もしかして、僕は天才か。

しかし。

「殿下っ!」

「…ん?」

そんな僕のおやつタイムに、レスリーが乱入してきた。

「…はふはふ。どうかしました?」

口の中が小籠包で一杯。

「聞きましたぞ!また厨房を借りて、キッチンメイドの真似事をされたとか!」

「小籠包作ったんですよ。ちょっと食べてみてください」

「はっ!?熱っ」

レスリーの口に、無理矢理小籠包を押し込んだ。

まぁとりあえず食べてみてくれ。

「む、むむっ…あ、熱い…」

小籠包だからね。

「で、でも。これはなかなか…」

「あっ、美味しいですか?」

「えぇ。とても美味…はっ!」

は?

「そういう話をしているのではありません!」

「美味しいんだから、良いじゃないですか」

これが不味いんだったら、救いようがないけど。

それなのに、レスリーは。

「良くありません!皇太子殿下ともあろう方が、メイドの真似事など!」

メイドの真似事って…。それはメイドに失礼では?

あの人達が頑張ってくれているから、僕は毎日食事にありつけるのだ。

「殿下はもっと、王族としての自覚を…は!?」

は?

「な、何を読んでいらっしゃるのですか…!?」

「あ、これですか?」

僕がおやつを食べながら、読んでた「おやつ」。

これは良いものだよ。

「先日買ったばかりのBLエロコミック。僕の好きな作者の新作なんですよ」

「な…な…」

「今回は、夜の街で男娼をしている受けが、客である責めに出会って、愛を育んでいくという純愛BLラブストーリーです。丁度今、抜か二でだいしゅきホールドしてる場面で、」

「殿下っ!!」

「はい?」

気に食わなかったか。このシチュエーションが。

僕は好きだけどな。

しかし、レスリーは。

「レスリーは…レスリーは、もう堪忍袋の緒が切れましたぞ!」

…お?

「このところ、料理だの掃除だの、メイドの真似事ばかりなさって!カップ麺だの、え、え、エロ本だの、いかがわしいものばかりにうつつを抜かして!」

「でも、勉強とかは割と真面目にやってるじゃないですか」

「それとこれとは話が別ですっ!殿下には、もう心を入れ換えて頂かなくては!」

入れ換える?

僕の心臓を?

移植?

「最近の殿下の素行の悪さを、全て皇太后様にご報告させて頂きます!」

…何だと?

「これを機に、心を入れ換えなさいませ!良いですね!」

そう吐き捨てるなり、レスリーはどたどたと部屋を出ていった。

…。

…とりあえず、小籠包食べようか。

もぐ。

「…」

皇太后様というのは、僕の母親のことである。

いたのか、って感じだと思うけど。

いたんだ。実はな。

ローゼリア姉の前国王だった父上が亡くなった後、王位継承権第一位だったのは、その妻である皇太后、つまり僕の母親だった。

しかし、母は亡き父に遠慮してか、それとも自分に国王という重圧を背負わされることを嫌がってか。

自ら王位継承権を娘、つまりローゼリアに譲った。

そして、自分は皇太后として、王宮でひっそりと暮らしているのである。

母に言いつける…ねぇ。

先生に言ってやろ!と変わらないレベルの告げ口だが。

「…はぁ」

何だか嫌な予感がして、僕は気が重い。