The previous night of the world revolution5~R.D.~

「…ん…?」

目を覚ました俺は、鼻腔をくすぐる甘い匂いを感じた。

…?

何だ、この匂いは…。

のろのろと起き上がる。

「…」

…なんか、キッチンから物音がするんだけど。

気のせいですかね。

うん、きっと気のせいだ。

あー良い朝だ、と俺はベッドの上で伸びをして、キッチンに繋がる扉を開けた。

「あ、おはようございますルルシーさん」

「…」

「朝食、丁度出来たところなんですよ。すぐ食べられますよ」

にこっ、と微笑む皇太子殿下、ルーチェス。

…うん。

とりあえず、一つ言わせてもらって良い?

「…お前まで侵入してくるんじゃねぇ!」

ルレイアとルリシヤだけで、充分手を焼いているというのに。

そこに更に増やされてたまるか。

って言うか、俺は俺で、何で気づかず寝てるんだよ!

「何処から入ってきた!」

「え?侵入経路だったら、ルリシヤさんに教えてもらいましたけど」

「あいつかぁぁぁ…!!」

あの、元祖不法侵入者め。

警察に突き出すぞ。

「それより、ルルシーさん」

「それよりって何だ。今、我が家のセキュリティ以上に大事なことがあるのか?」

「朝食食べましょう。出来立てのうちに」

「…え?」

よく見てみると。

テーブルの上には、たくさんの食器が並べられていた。

わざわざランチョンマットまで敷かれて。

「こ、これ…」

なんか甘い匂いするなーと思ってたけど…。

そこに並んでいたのは、およそ朝食にするには勿体ないような、豪勢なメニューの数々であった。

柔らかそうな焼きたてのパンと、ラムレーズンクリームチーズ。

こんがりと焼き目のついた、パイ包みシチュー。

野菜のたっぷり入ったキッシュ。

ドレッシングをかけたローストビーフ。

デザートに、果物がたっぷり入った、透き通ったゼリーまで。

お、お前…。

「全部僕が作ったんですよ。家庭の味です」

「…ある意味、家庭の味ではないだろ…」

物凄い努力は感じる。

でも、家庭で毎日これは、さすがに無理があるのでは?

「そうですか?僕の普段の朝食に比べたら、質素ですけど…」

「…」

ごめん、そうだった。

こいつ、王子様なんだった。

一般人と感覚が違い過ぎる…。

そもそも、人の家に勝手に侵入してくる時点で、感覚はおかしい。

しかも。