The previous night of the world revolution5~R.D.~

その後。

「良いなぁ、ルーチェス君は器用で…。もしかして、几帳面だったりする?」

…几帳面?

「どうでしょう…」

「部屋が散らかってるとか、ないでしょ?」

「えぇ、それはないです」

部屋が散らかってたことは、ないな。

そもそも部屋が広過ぎて、散らかそうと思ってもなかなか散らからない。

そういえば、昔から、礼儀作法は嫌というほど叩き込まれたけど。

片付けをしろとか、整理整頓しろとか、そういうことは言われた記憶がない。

つまりそれは、僕が生まれつき几帳面だということなのだろうか。

例え僕が片付けなかったとしても、侍従が勝手に片付けているだろうけど。

「凄いなぁ。じゃあ、掃除も上手なんだ」

「上手…?いや、掃除はしたことないです」

「えぇ?」

掃除は掃除婦の仕事だから、僕が自分の部屋を掃除したことはない。

なんてことだ。

僕は料理をしたことがないどころか、掃除もしたことがなかったのか。

指摘されて、初めて気がついた。

「じゃあ、誰が掃除してるの?」

「家の者が…」

「へぇ~…。良いなぁ。私、掃除も下手くそなんだよ」

ほう。

「片付けてるつもりなのに、何故かあちこちに物が散らかって…。ズボラだから、部屋の中、すぐ埃まみれなの」

「それは…困りましたね」

さすがに僕も、床に埃がパイのように積もった家に住むのは、ちょっと。

今時は、自動で掃除してくれる掃除機もあるそうだが。

あれって便利だよな。掃除婦要らなくないか?

「女子力皆無だって、よく言われる」

「おかしいですね…。セカイさん美人なのに…」

「…ルーチェス君。君、女子力って言葉の意味、知ってる?」

は?

「…ともかく、掃除も出来た方が良いですね」

「そりゃまぁ、掃除は出来た方が良いけど…」

…うん。

卵割れるし料理も出来るけど。

でも、掃除は出来ない皇太子って、何だか滑稽だな。

洗濯は今時、洗濯物放り込んで、ボタン押して放っとけば、乾燥までやってくれるらしいが。

掃除は、まだ人の手が必要だからな。

成程。料理を極めたなら、次は掃除を会得するのも悪くない。

「分かりました。僕、今度掃除も練習してきます」

「…ルーチェス君って、チャレンジ精神旺盛だよね」

「セカイさんに恥じない男になりたいので、努力します」

そう言うと、セカイさんはしばしぽかんとして。

それから、今度は正面から、また抱きついてきた。

「本当に可愛いのう…。この、この」

「あっ、くすぐったい…。そこ弱いんで、僕。やめてください」

正面から脇をくすぐるとは、姑息な。

「やだ、や~めない。くすぐり攻撃~」

「あ~、ふふっ。くすぐったい。ちょ、やり返しますよ」

「良いよ。私、くすぐり効かないから」

おのれ。

僕だけの弱点だとでも言うのか。

思えば、こんな隙を晒すのは、初めてかもしれないな。