その後。
「良いなぁ、ルーチェス君は器用で…。もしかして、几帳面だったりする?」
…几帳面?
「どうでしょう…」
「部屋が散らかってるとか、ないでしょ?」
「えぇ、それはないです」
部屋が散らかってたことは、ないな。
そもそも部屋が広過ぎて、散らかそうと思ってもなかなか散らからない。
そういえば、昔から、礼儀作法は嫌というほど叩き込まれたけど。
片付けをしろとか、整理整頓しろとか、そういうことは言われた記憶がない。
つまりそれは、僕が生まれつき几帳面だということなのだろうか。
例え僕が片付けなかったとしても、侍従が勝手に片付けているだろうけど。
「凄いなぁ。じゃあ、掃除も上手なんだ」
「上手…?いや、掃除はしたことないです」
「えぇ?」
掃除は掃除婦の仕事だから、僕が自分の部屋を掃除したことはない。
なんてことだ。
僕は料理をしたことがないどころか、掃除もしたことがなかったのか。
指摘されて、初めて気がついた。
「じゃあ、誰が掃除してるの?」
「家の者が…」
「へぇ~…。良いなぁ。私、掃除も下手くそなんだよ」
ほう。
「片付けてるつもりなのに、何故かあちこちに物が散らかって…。ズボラだから、部屋の中、すぐ埃まみれなの」
「それは…困りましたね」
さすがに僕も、床に埃がパイのように積もった家に住むのは、ちょっと。
今時は、自動で掃除してくれる掃除機もあるそうだが。
あれって便利だよな。掃除婦要らなくないか?
「女子力皆無だって、よく言われる」
「おかしいですね…。セカイさん美人なのに…」
「…ルーチェス君。君、女子力って言葉の意味、知ってる?」
は?
「…ともかく、掃除も出来た方が良いですね」
「そりゃまぁ、掃除は出来た方が良いけど…」
…うん。
卵割れるし料理も出来るけど。
でも、掃除は出来ない皇太子って、何だか滑稽だな。
洗濯は今時、洗濯物放り込んで、ボタン押して放っとけば、乾燥までやってくれるらしいが。
掃除は、まだ人の手が必要だからな。
成程。料理を極めたなら、次は掃除を会得するのも悪くない。
「分かりました。僕、今度掃除も練習してきます」
「…ルーチェス君って、チャレンジ精神旺盛だよね」
「セカイさんに恥じない男になりたいので、努力します」
そう言うと、セカイさんはしばしぽかんとして。
それから、今度は正面から、また抱きついてきた。
「本当に可愛いのう…。この、この」
「あっ、くすぐったい…。そこ弱いんで、僕。やめてください」
正面から脇をくすぐるとは、姑息な。
「やだ、や~めない。くすぐり攻撃~」
「あ~、ふふっ。くすぐったい。ちょ、やり返しますよ」
「良いよ。私、くすぐり効かないから」
おのれ。
僕だけの弱点だとでも言うのか。
思えば、こんな隙を晒すのは、初めてかもしれないな。
「良いなぁ、ルーチェス君は器用で…。もしかして、几帳面だったりする?」
…几帳面?
「どうでしょう…」
「部屋が散らかってるとか、ないでしょ?」
「えぇ、それはないです」
部屋が散らかってたことは、ないな。
そもそも部屋が広過ぎて、散らかそうと思ってもなかなか散らからない。
そういえば、昔から、礼儀作法は嫌というほど叩き込まれたけど。
片付けをしろとか、整理整頓しろとか、そういうことは言われた記憶がない。
つまりそれは、僕が生まれつき几帳面だということなのだろうか。
例え僕が片付けなかったとしても、侍従が勝手に片付けているだろうけど。
「凄いなぁ。じゃあ、掃除も上手なんだ」
「上手…?いや、掃除はしたことないです」
「えぇ?」
掃除は掃除婦の仕事だから、僕が自分の部屋を掃除したことはない。
なんてことだ。
僕は料理をしたことがないどころか、掃除もしたことがなかったのか。
指摘されて、初めて気がついた。
「じゃあ、誰が掃除してるの?」
「家の者が…」
「へぇ~…。良いなぁ。私、掃除も下手くそなんだよ」
ほう。
「片付けてるつもりなのに、何故かあちこちに物が散らかって…。ズボラだから、部屋の中、すぐ埃まみれなの」
「それは…困りましたね」
さすがに僕も、床に埃がパイのように積もった家に住むのは、ちょっと。
今時は、自動で掃除してくれる掃除機もあるそうだが。
あれって便利だよな。掃除婦要らなくないか?
「女子力皆無だって、よく言われる」
「おかしいですね…。セカイさん美人なのに…」
「…ルーチェス君。君、女子力って言葉の意味、知ってる?」
は?
「…ともかく、掃除も出来た方が良いですね」
「そりゃまぁ、掃除は出来た方が良いけど…」
…うん。
卵割れるし料理も出来るけど。
でも、掃除は出来ない皇太子って、何だか滑稽だな。
洗濯は今時、洗濯物放り込んで、ボタン押して放っとけば、乾燥までやってくれるらしいが。
掃除は、まだ人の手が必要だからな。
成程。料理を極めたなら、次は掃除を会得するのも悪くない。
「分かりました。僕、今度掃除も練習してきます」
「…ルーチェス君って、チャレンジ精神旺盛だよね」
「セカイさんに恥じない男になりたいので、努力します」
そう言うと、セカイさんはしばしぽかんとして。
それから、今度は正面から、また抱きついてきた。
「本当に可愛いのう…。この、この」
「あっ、くすぐったい…。そこ弱いんで、僕。やめてください」
正面から脇をくすぐるとは、姑息な。
「やだ、や~めない。くすぐり攻撃~」
「あ~、ふふっ。くすぐったい。ちょ、やり返しますよ」
「良いよ。私、くすぐり効かないから」
おのれ。
僕だけの弱点だとでも言うのか。
思えば、こんな隙を晒すのは、初めてかもしれないな。


