…十数分後。
数個の卵を犠牲にしてしまったが。
なんとか、無事にボウルの中に卵を落とし入れることに成功した。
もう完全にコツ掴んだ。何個でもかかってこい。
なんて、調子に乗ってるが。
最初の一個、力加減が出来ずに破壊してしまった。
あの卵には悪いことをしてしまった。
この罪を背負い、僕は生き残った卵達を菜箸でかき混ぜた。
「で…牛乳を入れる」
匙で量った牛乳を入れ、更に調味。
しっかり溶いて混ぜる。
よし、こんなもんかな。
ここからは、また火を使うことになる。
いよいよオムライス作ってる、って感じだな。
一番大事なところだから。
オムライスが成功するか、ぐちゃぐちゃの何かが出来上がるが、爆発するかは、ここからの工程にかかっている。
たまには、夜以外で本気を出しても良いだろう。
「…」
決意を新たに、僕はフライパンに油を敷き、溶きほぐした卵を注いだ。
ここからは、時間の勝負。
本によれば、少し火が通ってきたところに箸を入れて、スクランブルエッグみたいにちょっと混ぜるのがコツらしい。
ここが勝負だ。
僕のオムライスの運命が、ここで決まる。
この薄い黄色の卵に、まるで試されているかのような錯覚を受ける。
お前に出来るのか、と。
写真に載ってるみたいに、綺麗でふんわりしたオムライスを作れるのか。
それとも失敗して、無惨にチキンライスがはみ出し、焦げた卵を被せただけの、なんちゃってオムライスになるのか。
お前に料理の才能が、その片鱗があるのか。
見せてみろ、と。
挑戦状を投げつけられた気分である。
良いだろう。やってやろうではないか。
これでも、大抵のことは器用にこなしてきた方だ。
僕は見逃さない。その瞬間を。
生卵から半熟卵に変わるタイミングを逃さないよう、じっとフライパンを睨み付けていた。
まさに一触即発。
向こうが先か、僕が先か。
運命の瞬間を逃すまいと、菜箸が折れんばかりに握り締め、目玉が飛び出さんばかりに凝視する。
多分今、今年一番集中してる。
僕の緊張の水面に、一滴の雫がこぼれる瞬間を。
肉食獣が獲物を狩るときのように、虎視眈々と狙いを定め。
まだ、まだだ。まだ早い。
もう少し、あと少し…ほんの数秒で。
いざ決行のときがやって来ると確信した、
そのとき。
「殿下!一体何をしていらっしゃるんですか!?」
「ちょっと今集中してますから!黙っててくれます!?」
本気でキレた。
僕は、本気でキレた。
「え、あ、す、済みません…」
本気で怒鳴られた気の毒なレスリーは、口をつぐんでその場に立ち尽くした。
レスリーに謝る暇もなく、僕は菜箸を動かした。
くそっ。レスリーに構ってたせいで、二秒くらい遅れてしまった。
急いで、しかし繊細な手つきで卵をかき混ぜ。
カチッ、と火を止める。
ふぅ。
数個の卵を犠牲にしてしまったが。
なんとか、無事にボウルの中に卵を落とし入れることに成功した。
もう完全にコツ掴んだ。何個でもかかってこい。
なんて、調子に乗ってるが。
最初の一個、力加減が出来ずに破壊してしまった。
あの卵には悪いことをしてしまった。
この罪を背負い、僕は生き残った卵達を菜箸でかき混ぜた。
「で…牛乳を入れる」
匙で量った牛乳を入れ、更に調味。
しっかり溶いて混ぜる。
よし、こんなもんかな。
ここからは、また火を使うことになる。
いよいよオムライス作ってる、って感じだな。
一番大事なところだから。
オムライスが成功するか、ぐちゃぐちゃの何かが出来上がるが、爆発するかは、ここからの工程にかかっている。
たまには、夜以外で本気を出しても良いだろう。
「…」
決意を新たに、僕はフライパンに油を敷き、溶きほぐした卵を注いだ。
ここからは、時間の勝負。
本によれば、少し火が通ってきたところに箸を入れて、スクランブルエッグみたいにちょっと混ぜるのがコツらしい。
ここが勝負だ。
僕のオムライスの運命が、ここで決まる。
この薄い黄色の卵に、まるで試されているかのような錯覚を受ける。
お前に出来るのか、と。
写真に載ってるみたいに、綺麗でふんわりしたオムライスを作れるのか。
それとも失敗して、無惨にチキンライスがはみ出し、焦げた卵を被せただけの、なんちゃってオムライスになるのか。
お前に料理の才能が、その片鱗があるのか。
見せてみろ、と。
挑戦状を投げつけられた気分である。
良いだろう。やってやろうではないか。
これでも、大抵のことは器用にこなしてきた方だ。
僕は見逃さない。その瞬間を。
生卵から半熟卵に変わるタイミングを逃さないよう、じっとフライパンを睨み付けていた。
まさに一触即発。
向こうが先か、僕が先か。
運命の瞬間を逃すまいと、菜箸が折れんばかりに握り締め、目玉が飛び出さんばかりに凝視する。
多分今、今年一番集中してる。
僕の緊張の水面に、一滴の雫がこぼれる瞬間を。
肉食獣が獲物を狩るときのように、虎視眈々と狙いを定め。
まだ、まだだ。まだ早い。
もう少し、あと少し…ほんの数秒で。
いざ決行のときがやって来ると確信した、
そのとき。
「殿下!一体何をしていらっしゃるんですか!?」
「ちょっと今集中してますから!黙っててくれます!?」
本気でキレた。
僕は、本気でキレた。
「え、あ、す、済みません…」
本気で怒鳴られた気の毒なレスリーは、口をつぐんでその場に立ち尽くした。
レスリーに謝る暇もなく、僕は菜箸を動かした。
くそっ。レスリーに構ってたせいで、二秒くらい遅れてしまった。
急いで、しかし繊細な手つきで卵をかき混ぜ。
カチッ、と火を止める。
ふぅ。


