The previous night of the world revolution5~R.D.~

…十数分後。

数個の卵を犠牲にしてしまったが。

なんとか、無事にボウルの中に卵を落とし入れることに成功した。

もう完全にコツ掴んだ。何個でもかかってこい。

なんて、調子に乗ってるが。

最初の一個、力加減が出来ずに破壊してしまった。

あの卵には悪いことをしてしまった。

この罪を背負い、僕は生き残った卵達を菜箸でかき混ぜた。

「で…牛乳を入れる」

匙で量った牛乳を入れ、更に調味。

しっかり溶いて混ぜる。

よし、こんなもんかな。

ここからは、また火を使うことになる。

いよいよオムライス作ってる、って感じだな。

一番大事なところだから。

オムライスが成功するか、ぐちゃぐちゃの何かが出来上がるが、爆発するかは、ここからの工程にかかっている。

たまには、夜以外で本気を出しても良いだろう。

「…」

決意を新たに、僕はフライパンに油を敷き、溶きほぐした卵を注いだ。

ここからは、時間の勝負。

本によれば、少し火が通ってきたところに箸を入れて、スクランブルエッグみたいにちょっと混ぜるのがコツらしい。

ここが勝負だ。

僕のオムライスの運命が、ここで決まる。

この薄い黄色の卵に、まるで試されているかのような錯覚を受ける。

お前に出来るのか、と。

写真に載ってるみたいに、綺麗でふんわりしたオムライスを作れるのか。

それとも失敗して、無惨にチキンライスがはみ出し、焦げた卵を被せただけの、なんちゃってオムライスになるのか。

お前に料理の才能が、その片鱗があるのか。

見せてみろ、と。

挑戦状を投げつけられた気分である。

良いだろう。やってやろうではないか。

これでも、大抵のことは器用にこなしてきた方だ。

僕は見逃さない。その瞬間を。

生卵から半熟卵に変わるタイミングを逃さないよう、じっとフライパンを睨み付けていた。

まさに一触即発。

向こうが先か、僕が先か。

運命の瞬間を逃すまいと、菜箸が折れんばかりに握り締め、目玉が飛び出さんばかりに凝視する。

多分今、今年一番集中してる。

僕の緊張の水面に、一滴の雫がこぼれる瞬間を。

肉食獣が獲物を狩るときのように、虎視眈々と狙いを定め。

まだ、まだだ。まだ早い。

もう少し、あと少し…ほんの数秒で。

いざ決行のときがやって来ると確信した、

そのとき。

「殿下!一体何をしていらっしゃるんですか!?」

「ちょっと今集中してますから!黙っててくれます!?」

本気でキレた。

僕は、本気でキレた。

「え、あ、す、済みません…」

本気で怒鳴られた気の毒なレスリーは、口をつぐんでその場に立ち尽くした。

レスリーに謝る暇もなく、僕は菜箸を動かした。

くそっ。レスリーに構ってたせいで、二秒くらい遅れてしまった。

急いで、しかし繊細な手つきで卵をかき混ぜ。

カチッ、と火を止める。

ふぅ。