The previous night of the world revolution5~R.D.~

「えー、卵を割って…牛乳を入れる…」

…これが…卵。

僕は卵を手のひらに乗せて、しみじみと見つめた。

何をやってんだ、と思われるかもしれないが。

調理されていない生卵、しかも殻に入ってる状態で手にするのは、初めてである。

考えてみれば、王族が生卵を手にする機会はなかった。

なんて世間知らずなんだ。

知ってるか?

市販で売られてるこの卵って、暖めても雛は孵らないらしいぞ。

なんて下らない雑学を披露したところで。

割ろう。

しかし、これが意外に大変。

何故なら、生まれてこの方、目玉焼きの一つも作ったことのない僕は。

卵の割り方が、分からないのである。

そこからか。

そこからなのかルーチェス。お前は、世間知らずにも程があるぞ。

「…卵の一つも割れずに、何が皇太子だ…」

思わず自虐してしまうほどである。

バイオリン弾けて、トロンボーン吹いたりコントラバス弾けて、この皇太子、多才で羨ましいなぁって思った人。

君、卵を割れるなら、その時点で僕より格上だよ。

「…よし」

何個かの卵を、犠牲にしてしまう可能性はあるが。

食べ物を無駄にするという行為が、大変罪深いことも知っているが。

ちょっとだけ、練習させてもらおう。

幸いこのレシピ本、「猿でも分かる」と銘打つだけあって、卵の割り方まで解説してくれている。

なんて優しいんだ。これならもしかしたら、猿でも出来るかもしれない。

むしろこれが出来なかったら、僕は猿以下ということだな。

猿以下の皇太子。

笑えないので、まず卵くらいはちゃんと割れるようになりたい。