The previous night of the world revolution5~R.D.~

カップ麺事件から数日後。

「ちょっとお邪魔しますね」

「…!?」

「!?」

僕が王宮の厨房に入ると、中にいたシェフを始め、キッチンメイド達が、ぎょっとした目で僕を見た。

「少々、話したいことがあるんですが…」

「は、はいっ」

奥から、一番高いコック帽を被ったコック長が、慌てて走ってきた。

「昼食のリクエストですか?でしたら何なりと…」

「あ、いやそうじゃなくて」

昼食のメニューをリクエストしに来た訳ではなく。

するとコック長。何を思ったか。

「も、申し訳ありません。朝食に、何かお気に召さないものが?」

は?

いや、朝食に文句をつけにきた訳でもなく。

「で、では…何が…」

「ちょっとこのキッチン、貸してくれません?」

「…は?」

コック長、ぽかーん。

僕は、そんなにおかしなことを言っただろうか。

「今日は姉上も、昼はホテルで会食ですし。僕の分は作らなくて良いです」

「え、で、ですが」

「自分で作りますから」

「えぇぇ!?」

…そんなに驚かれるとは。

何だ。巷では、最近は料理得意な男子って多いんじゃなかったのか。

僕がその一員になって、何か悪いことでもあるのか。

「自分で作るんで、ちょっと厨房貸してください」

「し、しかし殿下…!殿下ともあろう方が、ご自分で厨房に立つなど…!」

「僕が自分で料理したら、何か悪いことでも?」

「い、いえ。そういう訳ではございませんが…」

…何故そんなに渋られるんだ。

あ、もしかして。

「勝手に荒らされるのが嫌ですか?大丈夫、ちゃんと後片付けはしますから」

作るだけ作ってあとは放置なんて、無責任極まりないからな。

作ったからには、後片付けまでやるつもりである。

「そんな、滅相もございません!後片付けはわたくし共でやりますから…」

「そうですか。じゃ、貸してください」

「え、で…ですが、その…」

「…何か?」

言いたいことがあるなら、はっきり言ってくれ。

「で…殿下は、その…今まで、料理の経験は…」

「ありませんけど」

「さ、左様ですか…。でしたらその…どうしてもと仰るなら、僭越ながらわたくしが、殿下のお隣で、お手伝いをさせて頂けませんでしょうか」

…あ?

「殿下にもしものことがあっては大変ですから…」

…あー。成程…。

コック長の言わんとすることが分かった。

下手に厨房を貸して、僕が指を切ったり、火傷をしたり、厨房を爆破したりしては、コック長の首が飛ぶ。

それが心配だから、貸したくないんだな。

「僕が勝手にやることですから、あなた方の責任は問いませんよ」

僕が指を切り落とそうと、ケロイドを作ろうと、厨房を爆破…したら僕だけの問題じゃ済まないかもしれないが。

この人達は、何も悪くない。

「で、ですが…!それでしたら、下拵えは我々が致しますので、殿下は調味だけ…」

「何ですか、そのインスタント食品みたいな料理…。僕がやりたいのはそういう料理じゃないんですよ」

ちゃんと材料から、一から作らなきゃ意味がない。

「そういう訳なので、ちょっとお借りします」

「で、殿下…!?」

そうこうしていたら、もう昼になってしまう。

早いところ始めないと。