The previous night of the world revolution5~R.D.~

翌日。

王家御用達の宝石商が、山のような装飾品を持ってやって来た。

「さぁ、殿下。どうぞご覧ください」

「…」

ほくほくと揉み手しながら、宝石商は僕の前に装飾品の数々を並べ始めた。

煌めかんばかりの、ルビーやエメラルドやサファイアの数々。

目がちかちかする。

それより気になるのは、そのどれもが、男物であるということ。

おまけに、ネックレスやアンクレット、ブレスレットなど、様々な種類の装飾品が並んでいる。

これらには、特に用はない。

「僕、指輪が欲しいんですが」

「指輪ですか?では、こちらなど如何でしょう」

宝石商は、僕の前にきらびやかな指輪の数々を並べた。

「この大粒のタンザナイト!こちらは原産地がごく限られておりまして、非常に希少価値の高いものになります」

「はぁ…」

「ほら、こちらも素晴らしい逸品ですよ。このアレキサンドライト、光に当てると色が変わりまして…」

長々と説明してくれて有り難いが。

でも、婚約指輪には向かない気がする。

婚約指輪って言ったら普通…なぁ?

ダイヤモンドが定番じゃないか?

それとも、今時はこういう、カラーストーンの方が女性受けするのだろうか?

「お気に召しませんか?殿下は青がよくお似合いですから、こちらのブルーガーネットなどおすすめですが…」

「あぁ、いや…。僕がつけるんじゃないんで」

「えっ、贈答品ですか?」

「はい」

そう答えると、宝石商は大変意外そうな顔をした。

僕がプレゼント用に宝石を買うのは、そんなにおかしいか。

「それは失礼を致しました。では、どの指輪をご所望でしょうか」

「そうですね…。ここは定番で…。ダイヤモンドで」

「ダイヤモンドですね。では、こちらの10カラットのダイヤが…」

うわー。ハードル高い。

カラットが大きければ良いってものじゃないだろう。

むしろ重たいと言うか。

でか過ぎると言うか。

でもなぁ、ケチ臭い男だとも思われたくないし。

キリ良く1カラット…。いや、それでも大きいか?

じゃあ0.7くらいで…。いや、それだとキリが悪いか。

なら0.5?ケチ臭いか?

あぁ、なんか分かんなくなってきた。

「じゃあ間を取って、0.8カラットくらいで」

「間を…。殿下がそれで宜しいのならば、構いませんが…」

一般市民にしてみれば、それでも目玉飛び出るような金額なのだろう。

しかし、自分の気に入った宝石となれば、何千万かけても惜しまなかった姉のローゼリアを知っているからか。

宝石商は、王族の割に、思いの外安い買い物をするもんだ、と思っているようだ。

「それで…指輪のサイズですが…」

「あぁ、サイズ…。サイズよく知らないんですよね、多分僕とあまり変わらなかった気がしますけど…」

まぁ、指輪のサイズはいつでも直せる。

とりあえずつけてもらってみて、それから直せば良いや。