The previous night of the world revolution5~R.D.~

こうなったら。

「うぇぇ~んシュノさん!ルルシーが酷いんです!婚約指輪まで用意したのに、婚約破棄するって言うんですよ!」

シュノさんに泣きつくと、彼女は俺を慰めるように背中をさすり、そしてキッ、とルルシーを睨んだ。

「ルルシー!それは酷いと思うわ。婚約指輪を受け取らないなんて!婚約指輪は、女の子の夢なのよ!」

「いや、女の子って…。ルレイアは男だろ…?」

いやんルルシー。

「高かったんですよこの指輪。ルルシーの為に丹誠込めて用意したんですよ!受け取ってくださいよ!」

「断る。お前と婚約したつもりはない」

酷い!

俺がこんなに頼んでるのに。断るなんて。

「ずっと夢だったんですよ、ルルシーとの婚約指輪!折角買ってきたんですから!」

「何度言われようと断る」

「酷いルルシー!こんなに頼んでるのに!」

「そうだぞルルシー先輩。俺が夜中に忍び込んで、ルルシー先輩の指輪のサイズを測ったんだから。受け取ってもらわないと俺の苦労が水の泡だ」

「お前らグルだったのかよ!さっきまでの茶番は何だったんだ!?」

いやん。それは言わないお約束。

お互い分かっててもこう…。遊びたくなるときってあるじゃん?

実際楽しかったし。

「ふざけんな!これ以上お前らの茶番に付き合ってられるか!」

「そんな!ルルシーはそんなに俺のことが嫌いなんですか!?」

俺は、涙目になってルルシーに訴えた。

ここまで断られるなんて、もうそうとしか思えない。

「は!?何でそんな話になるんだよ」

「だって、好きだったら受け取ってくれるでしょ!?受け取ってくれないってことは、俺のことが嫌いってことなんだ!ルルシーに嫌われるなんて!もう今生に生きている価値はない!帝都のルティス大河に飛び込んできます!」

「ちょ、ちょっと待てルレイア!」

こうなったら入水するしかない、と飛び出しかけた俺の腕を、ルルシーが慌てて掴んだ。

シュノさんはその光景を見て、涙目になって。

「ルルシー!受け取ってあげて!ルレイアはこんなにあなたを思ってるのに…!ここで指輪を受け取らないなんて、あなたは鬼よ。人の姿をした鬼だわ!」

「そうだそうだ!ルル公の血は何色だ!」

「心配されなくても赤だよ!」

嘘だ。ルルシーの血が赤いなら、ちゃんと指輪を受け取ってくれるはず。

「ルルシーが婚約指輪つけてくれないなら、俺は入水します!」

「分かった。分かったよルレイア!分かったから!」

えっ。

今ルルシー、分かったって言った?

「…つけてくれるんですか?」

「あぁつける。つけるよ。ただし、中指な。中指で妥協してくれ。頼むから」

えぇー。中指~?

それじゃあんまり意味ないんだけど…。まぁ、良いか。

つけてくれるんなら。

「分かりました。じゃあ片時も離さず、中指に嵌めててくださいね?」

「はいはい、分かった。だから入水はやめてくれ。な?」

こくり、と素直に頷く。

ここは妥協しよう。折角嵌めてくれる気になったんだから。

「ルレイア、良かったね…!素敵…!」

「実に感動的な瞬間だな」

幹部達に見守られ。

俺とルルシーは無事、婚約指輪を指に嵌めたのだった。

にゅふふ。