The previous night of the world revolution5~R.D.~

俺が彼のことを知っているのは、ウィスタリア家の人間としてではなく、帝国騎士団四番隊隊長として、彼と会う機会があったからだ。

帝国騎士団隊長としての叙任式、あとは女王の在位記念式典のとき…。

それも、個人的な話をした訳ではない。

あくまで儀礼的な挨拶だけだ。

ご健勝で何よりです殿下、くらいしか言ってない。

向こうも向こうで、そちらこそお元気そうで、くらいしか言ってないはず。

お互いに興味がないと言うより、王族との挨拶は、あらかじめ台本のように、一言一句決められているからだ。

それ以外の言葉を発することは、不敬罪に当たる。

王族の方も、家臣に対する挨拶の言葉は、あらかじめ決められている。

呪文を唱えているようなものだ。

だから、お互いに儀礼的な会話をすることしか出来なかった。

存在そのものは知っていた。挨拶もしたことはある。

しかし、ローゼリアとアルティシアに弟がいるという事実を知っている者が、この国にどれほどいることか。

とんでもなく失礼なアリューシャの言葉にも、ルーチェス殿下は苦笑して答えた。

「誰でもそう思いますよね。僕もそう思います」

自覚はあるようだ。

「ベルガモット王家は…と言うか王室は、基本的に秘密主義ですからね。一般には、長子以外は、その存在を知られていないんです」

ローゼリア女王が退位したときも、そうだったろう。

あまりにローゼリア女王が目立ち過ぎたせいもあって、その妹であるアルティシアが出てきたとき。

国中が、「あんた誰?いたの?」みたいな空気になってた。

それも仕方ない。

他国による陰謀や暗殺、国内の権力争いなど、王室を巡るあらゆるいさかいを避ける為。

王族の存在は、ほんの一握りの人間にしか知られていない。

意図的に隠されているのだ。

だから、中流貴族以下一般市民は、国王以外の王族を知らない。

下手に知られていたら、シェルドニア王家みたいな面倒なことになるから、知られていない方が良いのかもしれない。