The previous night of the world revolution5~R.D.~

…誰だっけ?

…と、言えたら良かったんだけど。

残念ながら、俺はその顔に見覚えがあった。

「…?」

ルルシーやシュノさん、ルリシヤも、彼の顔に見覚えがないようだった。

そうだろう。

一般市民には、決して公開されない。

最低でも貴族…それも、上流貴族ともなれば、ようやく、遠目に姿をお目にかかることが出来る。

ましてやお言葉を頂こうと思えば、帝国騎士団の隊長ともならなければ、まず叶わない。

「…覚えてますか?僕のこと」

「…えぇ。思い出しました」

前に見たときは、まだ年若い少年だったね。

ローゼリアの影に隠れて、全く目立つ存在ではなかった。

けれど彼は、今こうして時を経て、俺の前にいる。

なんという運命であろうか。

「ご壮健そうで何よりですね。…殿下」

「あなたこそ、生きていてくれて、良かった」

俺達の、そのやり取りに。

ルルシー達は、愕然としていた。

「殿下…?どういう意味だ?」

「ルレイア…。この人と、どういう関係なの?」

どういう関係…か。

強いて言うなら、かつての上司…ってところか?

どう紹介したものか、と思っていると。

本人が、自己紹介をしてくれた。

「初めまして、『青薔薇連合会』の皆さん。僕はルーチェス・ジュリアナ・ベルガモット。ベルガモット王家の嫡子で、女王アルティシアの弟です」

「…!?」

驚くのも無理はない。

まさか、本物の王子様が、マフィアの本拠地に現れるなんて。

誰だって、一体何の冗談だと思うだろう。

でも、冗談ではない。

この男は、間違いなく…かつて俺が跪き、忠誠を誓った、王族の一人だ。