「これは…ルーチェス殿下」
訪ねてきたのが誰なのか知った彼は、恭しく頭を下げた。
本来なら、まずは礼儀正しく挨拶をするべきところなのだろう。
だが、今はそれどころではない。
「一体どういうことですか。これは!」
僕は、手に持っていた新聞を叩きつけた。
そこには、事件の全貌が明らかにされていた。
数年前に起きた姉の暗殺未遂事件。その犯人を、当時入団して間もなかった帝国騎士団の隊長に押し付け、隠蔽し、彼を帝国騎士団からも、貴族の家からも追い出した…。
この罪を、どうしたら許すことが出来ようか。
「…申し訳ありません。今回の事件、姉君の名ばかりか、殿下と、ベルガモット王家の名を辱しめる結果に…」
「そんなことはどうでも良い!」
確かに、今回の件の責任を追及され、姉ローゼリアは失脚した。
王位を追われた。
だが、そんなことはどうでも良い。
どうでも良いのだ。
「何故ウィスタリア卿に、罪を負わせたのですか。何故真相を明らかにしなかったのですか!隠蔽し、ウィスタリア卿を切り捨てたが為に、こんなことに…」
帝国騎士団は、正義の集団と聞いた。
そう聞いて、そう教えられて育った。
そのはずではなかったのか。
その組織が何故、仲間を裏切るような真似をするのか。
「…全ては、王家の威信を守る為でした」
「…」
帝国騎士団長は、淡々とそう答えた。
王家の…威信…?
「そして、帝国騎士団を守る為でもありました。結果としては、このような事態になってしまいましたが…。何度同じ選択を迫られたとしても、私はこの選択を良しとしたでしょう」
「…」
「ですが、そのせいで殿下の名を傷つけてしまいました。それについては、申し訳なく…」
「…それが」
「…」
「それが…あなたの…あなた方の…正義、ですか?」
「はい」
即答だった。
他に答えなどない。
それがこの国の、…正義。
訪ねてきたのが誰なのか知った彼は、恭しく頭を下げた。
本来なら、まずは礼儀正しく挨拶をするべきところなのだろう。
だが、今はそれどころではない。
「一体どういうことですか。これは!」
僕は、手に持っていた新聞を叩きつけた。
そこには、事件の全貌が明らかにされていた。
数年前に起きた姉の暗殺未遂事件。その犯人を、当時入団して間もなかった帝国騎士団の隊長に押し付け、隠蔽し、彼を帝国騎士団からも、貴族の家からも追い出した…。
この罪を、どうしたら許すことが出来ようか。
「…申し訳ありません。今回の事件、姉君の名ばかりか、殿下と、ベルガモット王家の名を辱しめる結果に…」
「そんなことはどうでも良い!」
確かに、今回の件の責任を追及され、姉ローゼリアは失脚した。
王位を追われた。
だが、そんなことはどうでも良い。
どうでも良いのだ。
「何故ウィスタリア卿に、罪を負わせたのですか。何故真相を明らかにしなかったのですか!隠蔽し、ウィスタリア卿を切り捨てたが為に、こんなことに…」
帝国騎士団は、正義の集団と聞いた。
そう聞いて、そう教えられて育った。
そのはずではなかったのか。
その組織が何故、仲間を裏切るような真似をするのか。
「…全ては、王家の威信を守る為でした」
「…」
帝国騎士団長は、淡々とそう答えた。
王家の…威信…?
「そして、帝国騎士団を守る為でもありました。結果としては、このような事態になってしまいましたが…。何度同じ選択を迫られたとしても、私はこの選択を良しとしたでしょう」
「…」
「ですが、そのせいで殿下の名を傷つけてしまいました。それについては、申し訳なく…」
「…それが」
「…」
「それが…あなたの…あなた方の…正義、ですか?」
「はい」
即答だった。
他に答えなどない。
それがこの国の、…正義。


