The previous night of the world revolution5~R.D.~

「これは…ルーチェス殿下」

訪ねてきたのが誰なのか知った彼は、恭しく頭を下げた。

本来なら、まずは礼儀正しく挨拶をするべきところなのだろう。

だが、今はそれどころではない。

「一体どういうことですか。これは!」

僕は、手に持っていた新聞を叩きつけた。

そこには、事件の全貌が明らかにされていた。

数年前に起きた姉の暗殺未遂事件。その犯人を、当時入団して間もなかった帝国騎士団の隊長に押し付け、隠蔽し、彼を帝国騎士団からも、貴族の家からも追い出した…。

この罪を、どうしたら許すことが出来ようか。

「…申し訳ありません。今回の事件、姉君の名ばかりか、殿下と、ベルガモット王家の名を辱しめる結果に…」

「そんなことはどうでも良い!」

確かに、今回の件の責任を追及され、姉ローゼリアは失脚した。

王位を追われた。

だが、そんなことはどうでも良い。

どうでも良いのだ。

「何故ウィスタリア卿に、罪を負わせたのですか。何故真相を明らかにしなかったのですか!隠蔽し、ウィスタリア卿を切り捨てたが為に、こんなことに…」

帝国騎士団は、正義の集団と聞いた。

そう聞いて、そう教えられて育った。

そのはずではなかったのか。

その組織が何故、仲間を裏切るような真似をするのか。

「…全ては、王家の威信を守る為でした」

「…」

帝国騎士団長は、淡々とそう答えた。

王家の…威信…?

「そして、帝国騎士団を守る為でもありました。結果としては、このような事態になってしまいましたが…。何度同じ選択を迫られたとしても、私はこの選択を良しとしたでしょう」

「…」

「ですが、そのせいで殿下の名を傷つけてしまいました。それについては、申し訳なく…」

「…それが」

「…」

「それが…あなたの…あなた方の…正義、ですか?」

「はい」

即答だった。

他に答えなどない。

それがこの国の、…正義。