レスリーの説教は、いつもの通りであった。
「皇子ともあろう方が、漫画などという低俗なものを読むなど!断じて許されませんぞ!」
…あなたは今、全ての漫画家と、漫画を愛する国民達を敵に回した。
活字の本なら低俗じゃないと?
活字だってエロ本くらいあるよな?
「しかもこんな…しゅ、衆道ものの本など!言語道断です!」
「良いじゃないですか、別に…。今時、同性愛なんて普通でしょう?」
かのシェルドニア王国では、同性結婚が認められていると言うし。
ルティス帝国でも、早急に同性婚を認めるべきだと、僕は思う。
同性愛を批難するなんて、実に前時代的だ。
「大衆はそうかもしれませんが、あなた様は皇子なのですよ!」
「はい」
「皇子であるあなたは、世継ぎを残さなければならない身。同性同士で、世継ぎが産めますか」
…産めませんね。
何処かから拾ってくるしかない。
「だ、大体その…殿下は」
「はい?」
「お、男の方が…お好きなのですか?」
…凄い質問だ。
「僕は性別でパートナーを選びはしません。相手の人間性で選びます。そこに性別はどうでも良い」
「良くありません!」
一喝されてしまった。
何故駄目だ。
「全く、このような本ばかり読んでいるから、性的志向が歪むのです。良いですか、今後、このようないかがわしい本を読むことは、一切禁じます」
酷い言われようだ。
本に罪はないし、その本を読んで楽しんでる人は大勢いるはずだ。
それを、いかがわしいなどと。
確かにいかがわしいけれども。
「そもそも、何処からこのような本を入手したのです」
「それは…」
勿論、僕が普段出入りを許されている王宮書庫には、そのような本はない。
だから…。
「…さては、また王宮を抜け出しましたな?」
「…」
「…はぁぁ…」
僕の沈黙を、肯定と理解したのか。
レスリーは、深い溜め息をついた。
「…良いですか、皇太子殿下。もう幾度も幾度も、口を酸っぱくして申し上げたことですが」
「…はい」
「あなたは今後、このルティス帝国を背負って立つかもしれないお方。その責務を、分かっておいでですか」
「…」
…一応は。
「一般帝国民ならば、遊んだり、怠けたり、いかがわしい本にうつつを抜かすことも許されるでしょう。しかし、国民の血税によって生かされ、高度な教育を受け、生まれながらに人々にかしずかれる立場であるあなたは、それ相応の態度を取らなければなりません」
「…」
「あなたは特別なお方なのです。特別なお方は、特別な生き方をしなければならない。一般市民と同じ生き方を望むなど、決して許されないのですよ」
「…分かってますよ」
そりゃそうだろう。
僕だって、それは何回も考えた。
嫌と言うほど聞いた。
「分かっていらっしゃると言うなら、どうか心を入れ替えください。王宮を抜け出すのも、このような本を読むのもおやめください。威厳を。姉君のような、威厳をお持ちください」
「…」
「良いですね」
レスリーはそう言い放ち、僕の返事を待たず、お宝BLコミックを持って、部屋を出ていった。
…威厳、威厳ね。
僕は今一度、安楽椅子に横たわって、天を見上げた。
「…この国の王室に、威厳なんてあるもんか」
僕は誰にも聞こえないように、そう呟いた。
レスリーがこれを聞いたら、また怒髪天ついて怒るに決まってる。
でも、僕はそう思ってる。
「皇子ともあろう方が、漫画などという低俗なものを読むなど!断じて許されませんぞ!」
…あなたは今、全ての漫画家と、漫画を愛する国民達を敵に回した。
活字の本なら低俗じゃないと?
活字だってエロ本くらいあるよな?
「しかもこんな…しゅ、衆道ものの本など!言語道断です!」
「良いじゃないですか、別に…。今時、同性愛なんて普通でしょう?」
かのシェルドニア王国では、同性結婚が認められていると言うし。
ルティス帝国でも、早急に同性婚を認めるべきだと、僕は思う。
同性愛を批難するなんて、実に前時代的だ。
「大衆はそうかもしれませんが、あなた様は皇子なのですよ!」
「はい」
「皇子であるあなたは、世継ぎを残さなければならない身。同性同士で、世継ぎが産めますか」
…産めませんね。
何処かから拾ってくるしかない。
「だ、大体その…殿下は」
「はい?」
「お、男の方が…お好きなのですか?」
…凄い質問だ。
「僕は性別でパートナーを選びはしません。相手の人間性で選びます。そこに性別はどうでも良い」
「良くありません!」
一喝されてしまった。
何故駄目だ。
「全く、このような本ばかり読んでいるから、性的志向が歪むのです。良いですか、今後、このようないかがわしい本を読むことは、一切禁じます」
酷い言われようだ。
本に罪はないし、その本を読んで楽しんでる人は大勢いるはずだ。
それを、いかがわしいなどと。
確かにいかがわしいけれども。
「そもそも、何処からこのような本を入手したのです」
「それは…」
勿論、僕が普段出入りを許されている王宮書庫には、そのような本はない。
だから…。
「…さては、また王宮を抜け出しましたな?」
「…」
「…はぁぁ…」
僕の沈黙を、肯定と理解したのか。
レスリーは、深い溜め息をついた。
「…良いですか、皇太子殿下。もう幾度も幾度も、口を酸っぱくして申し上げたことですが」
「…はい」
「あなたは今後、このルティス帝国を背負って立つかもしれないお方。その責務を、分かっておいでですか」
「…」
…一応は。
「一般帝国民ならば、遊んだり、怠けたり、いかがわしい本にうつつを抜かすことも許されるでしょう。しかし、国民の血税によって生かされ、高度な教育を受け、生まれながらに人々にかしずかれる立場であるあなたは、それ相応の態度を取らなければなりません」
「…」
「あなたは特別なお方なのです。特別なお方は、特別な生き方をしなければならない。一般市民と同じ生き方を望むなど、決して許されないのですよ」
「…分かってますよ」
そりゃそうだろう。
僕だって、それは何回も考えた。
嫌と言うほど聞いた。
「分かっていらっしゃると言うなら、どうか心を入れ替えください。王宮を抜け出すのも、このような本を読むのもおやめください。威厳を。姉君のような、威厳をお持ちください」
「…」
「良いですね」
レスリーはそう言い放ち、僕の返事を待たず、お宝BLコミックを持って、部屋を出ていった。
…威厳、威厳ね。
僕は今一度、安楽椅子に横たわって、天を見上げた。
「…この国の王室に、威厳なんてあるもんか」
僕は誰にも聞こえないように、そう呟いた。
レスリーがこれを聞いたら、また怒髪天ついて怒るに決まってる。
でも、僕はそう思ってる。


