The previous night of the world revolution5~R.D.~

…ふむ。

これは、実に良い本だ。

日曜の午後、僕は安楽椅子に腰掛けて、読書に勤しんでいた。

すると。

「…殿下。ルーチェス皇太子殿下!」

「…」

…うるさいのがやって来た。

「…何か用ですか?」

「ようやく見つけたましたぞ。また街に降りているのかと…」

ちゃんといるんだから、良いじゃないか。

何故文句を言われなければならない。

「こんなところで、何をしておられるのです!」

何をって、それは見ての通り。

「読書ですね」

「ほう、読書ですか…。それは良いことです。皇太子殿下たるお方は、読書によって見聞を広…め!?」

「め?」

僕の執事のレスリーは、僕が開いている本の表紙を見て、度肝を抜いた。

「な…な…な…」

「な?」

「な、なんという本をお読みになっているのですかっ!!」

なんという本を…って。

「BL漫画です。R18の」

この本は、所謂活字の本ではない。

コミックだ。

しかも、ボーイズラブ…俗に言うBL本。

コミックの表紙には、うら若い青年と、不精髭を生やしたおじさんが、半裸で組み合って頬を火照らしている絵が、でかでかと描かれていた。

良い構図だ。

「これ面白いですよ。一途な受けと、鈍感な責めの愛の駆け引きが…」

「そ、そんなことはどうでも良いのですっ!」

「知ってました?慣れると、男でも後ろだけでイけるらしいですね。都市伝説だと思ってたんですけど…」

「~っ!!」

レスリーは、耐えかねたように僕の手からBLコミックを奪い取った。

あ。

「こ、こんなものは、皇太子殿下の読むものではありません!」

…また始まった。

レスリーの、お馴染みのお説教が。