The previous night of the world revolution5~R.D.~

ルヴィアにも、ルヴィアの嫁の方にも、お互い悪意がある訳ではないだけに。

どう慰めて良いものか分からない。

嫁は嫁で、嘘をつかれていたことに苛立っているのだろうし。

ルヴィアはルヴィアで、嫁に心配をかけたくない一心。

どちらが悪い訳ではない。

「ま、まぁ…。元気出せ、ルヴィア…。誠意を持って謝れば、きっと許してくれるよ」

「ルルシーさん…」

希望を持って顔を上げるルヴィア。

良かった、ようやく気を取り直し、

「いや~分かりませんよ?今頃華弦さんと、『妻に嘘をつく夫のいる家になんて、もう帰りたくありません』『あらそう?じゃあうちに来る?』『えぇ、そうします』なんて、別居の相談をしてるかもしれません」

「ばっ…!ルレイア!」

そうだった。忘れてた。

こいつは、余計なことを言う天才だったんだ。

「それどころか、『もう愛想を尽かしたので、離婚も考えています』『分かりました。じゃあ良い弁護士を紹介しますよ』『本当ですか?ありがとうお姉ちゃん』なんて楽しそうに離婚相談を…もごもごもご」

とんでもないことを言い出すルレイアの口を、俺は全力で塞いだ。

お前、この馬鹿。

俺の部下を殺したいのか。

「そ、そんな…。離婚…離婚…り、こ…」

見ろ。離婚の二文字に、ルヴィアが震えている。

「落ち着けルヴィア。大丈夫だ。こんなの、ちょっとした夫婦喧嘩だ。謝ればきっと許してくれ、」

「…俺は嫁に捨てられ~た~…♪捨て犬~…。孤独なー…。生きてる価値もー…ない…」

虚ろな目で歌い始めてる。

やばいぞ。ルヴィアが死にかけてる。

「良いかルレイア、お前は黙ってろ」

「だって事実じゃないですか。華弦さん、妹さんのこと気に入ってるみたいだし。冴えない顔した夫より、仲良し姉妹で同居した方が楽し、もごもごもご」

「だ・ま・っ・て・よ・う・な、ルレイア…!」

こいつ、もう隣の409号室に叩き込め。

一人で歌わせとけ。

ルヴィアの傷口に、塩どころか毒を塗りつけてる。

「よ、嫁が…。嫁と離婚…離婚なんて…」

ぶるぶると身体を震わせるルヴィア。

「落ち着くんだ、良いか落ち着くんだルヴィア!お前達が仲良し夫婦だってことは、俺もよーく分かってるから」

この夫婦の惚気話は、もう耳にタコが出来るほどに聞いた。

そう簡単に離婚なんてするものか。

この夫婦に至っては、離婚の「り」の字も考えられない。

「心込めて謝れば、きっと許してくれるよ。な?元気出せって」

「…フューニャ…」

駄目だ。そんじょそこらの慰めじゃ、今のルヴィアには届かない。

それどころか。

「フューニャ…。フューニャ…。うへは、うばは▼↓○◇◆▽△●●@#」

「ルヴィア、正気に戻れ!」

「あはは!壊れた~♪」

「ルレイア、指差して笑うな!」

これは、本格的に何とかしないと不味いぞ。

有能な俺の部下が、腑抜けになってしまう。