The previous night of the world revolution5~R.D.~

フューニャは、玄関に駆けつけてはこなかった。

柱の奥から、顔を半分だけ出して、じっ…とこちらを睨んでいた。

…不味い。

これは、何か怒ってるときの行動だ。

「ふっ…。フューニャ…。た、ただいま」

「…」

駄目だ。お帰りも言ってくれない。

絶対怒ってる。絶対何かに怒ってる。

何に怒ってるんだ?三日も留守にしたことか?

「あの、これ…。ケーキ!ケーキ買ってきたんだ。美味しいケーキ屋さんの…。フューニャ、た、食べるだろ?」

「…」

フューニャはじっとこちらを睨み。

こくっ、と頷いた。

良かった。ケーキは食べるらしい。

大好きだもんな。

しかし、こちらにてこてこ寄ってきてくれないのは何故なのか。

俺は一体、何を怒らせるようなことをしてしまったんだ?

思い出せ。思い出せルヴィア・クランチェスカ!

「あ、あ、あの…。ごめんな、三日も留守にして…。寂しかった、よな?」

「…」

…ふるふる、と首を横に振るフューニャ。

めっちゃショックだった。

「えっと…。明日は休みをもらったんだ。一緒に、その…。デートに…」

「…ルヴィアさん」

「は、ひゃいっ」

あまりにも低い声で名前を呼ばれ、俺は噛んでしまった。

「あなた…私に隠していることがありますね?」

「そっ…。そ、れは…」

「…ありますね?」

「…はい」

認めざるを得ない。

ここまで来たら。

フューニャはつかつかと俺に歩み寄ってきた。

しかし、それはいつものお帰りの儀式ではない。

「アシスファルト帝国に出張に行く…とおっしゃってましたよね?」

「…はい…」

「…で?何処に行ってきたんですか?」

「そ、それは…!」

「…『厭世の孤塔』とかいう、凶悪なマフィアと戦ってきたそうじゃないですか」

「…!」

…バレてる。

何故?何故バレた?

何処から漏れたんだ?

「そ、それを何処から…」

「お姉ちゃんに聞きました」

そうだったぁぁぁぁ!

お義姉さんがいたんだった!何故それを失念していたんだ、俺!

今更気がついても、時は既に遅い。

俺は今や、断頭台に立たされた死刑囚も同然である。